最近何かと「大学ランキング」というものが話題に上がります。東京大学が何位だとか、やれ上がった、やれ下がった、などとニュースにもよく上がります。
海外進学を語る際にも必ずと言っていいほど、大学ランキングというものが出てきます。日本の大学の順位が思ったよりも低いこのランキングを引き合いにして、「日本の大学より海外の大学」という論調も目立ってきました(実際は、数字だけをとらえて、ランキングの中身を分かっていない人が論じている場合ほとんどですが)。
また、日本政府もこのランキングを指標に大学改革に乗り出しました。実際に、スーバーグローバル大学(SGU)は、世界大学ランキング上位に入る大学(Aタイプ)やグローバル化を牽引する大学(Bタイプ)を増やそうという取り組みにほかなりません。そういう意味で、この世界大学ランキングは色々なところで影響をもたらしているのです。
言うなれば、大学の質が、従来の国内偏差値で測られる時代から国際競争力という観点で測られる時代へと変化してきました。
○ タイプA:トップ型
世界大学ランキングトップ100を目指す力のある、世界レベルの教育研究を行うトップ大学を対象とする。
○ タイプB:グローバル化牽引型
これまでの実績を基に更に先導的試行に挑戦し、我が国の社会のグローバル化を牽引する大学を対象としする。
(日本学術振興会 ホームページより)
大学ランキングは様々なところが出していますが、メインとなるのは以下の3つです。その中でも、QSとTHEのランキングが定番です。私のウェブではQSランキングを参照しています。
○ QS大学ランキング:
イギリスのクアクアレリ・シモンズ社発表しているランキング
○ THE大学ランキング:
イギリスの専門誌「Times Higher Education」が発表しているランキング
〇 世界大学学術ランキング:
上海交通大学の研究所が発表しているランキング
大学ランキングがメジャーになり、その存在感は増す一方ですが、しかし、ランキングというのはどれだけ実態があるのでしょうか。
オリンピックの陸上であれば、タイムという客観的な物差しで順位をつけることができます。サッカーやテニスのランキングも「どこまで本当?」と思うことがありますが、国際試合の結果などをもとに決めているのであれば、一応の実態を反映していると言えるかもしれません。
では、大学ランキングはどうでしょうか。タイプも文化も異なる世界の大学を1つの基準にはめこんでランキングにしているわけですが、どこまでそれは実態に即したものになっているのでしょうか。
そもそもその評価項目や審査方法、点数化は正しいものなのでしょうか。そして、小数点第1位までスコアとして出し、順位の優劣を付けていますが、大学の質というのはそんな細かい点数に変換することができるのでしょうか。また、教育・研究の質において、技術大国日本のトップ大学が、アメリカやイギリスのトップ大学にそこまで引けを取るのでしょうか。
その答えは、見方によってYESにもNOにもなりえます。そう考えると、大学ランキングというのはあいまいな部分も多く、サッカーやテニスの世界ランキングより怪しいものに思えてきます。
大学ランキングは実態がなくて意味がない、と言う気はありません。ある見方、ある手法によれば、正しいデータであり、実態を反映しているものであると思います。ただし、万能な物差しはありませんよね。あくまでもある1つの物差しで測った「ある1つの見方」であり、「事実」ではないということです。
データは便利ですが、それを鵜呑みするわけにはいけません。私たちはまずその恣意性を理解しておくこと、そして「どういう見方、どういう物差し」で測ったのかを理解しておく必要があります。そのあたりは、この後のページで見ていくことにします。