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グローバル化が引き起こす変化

何パーセントの職業が消えるのか


いきなり質問です。今の小学生が社会に出るとき、現在の職業の何パーセントが残っているでしょうか。

以下は、20118月にニューヨークタイムズに掲載されたデューク大学の研究者キャシー・デービッドソン有名な言葉で、世界中で大きな波紋を呼び、取りざたされています。

Fully 65 percent of today’s grade-school kids may end up doing work that hasn’t been invented yet….
2011年度に入学した小学生の 65%は大学卒業時、今は存在していない職に就くだろう。)

私は65%というのは大げさな数字で、実際はそこまでいかないと個人的に思っていますが、私たちの社会が間違いなく激動の変化に直面していることは事実です。デジタル化、グローバル化、少子高齢化、この3つの大きな変化が時代の波を作っています。ここではグローバル化、少子高齢化という現象の関連性に注目をして、今後の社会に必須となる3つのキーワードを探っていきます。

グローバル × 少子高齢化


グローバル化、少子高齢化、これらは本質的には別々の現象ですが、今の日本にとって、この2つが掛け算のように絡み合い、時代の変化の波を作り上げています。グローバル化は世界共通の現象と言えますが、少子化については先進国に顕著な問題です(世界規模では人口の爆発的な増加のほうが課題になっています)。日本も出生率が1.42(2014年、厚生省)であり、急激に高齢化が進んでいます。私が小学生だった頃は、日本の人口は「12000万人」と習った気がしますが、今では「13000万人」と言われるので、人口が増えているかのような錯覚に陥りそうですが、実は2005年から日本は人口減少に転じ、2050年には9500万人と推測されています。生産年齢人口といわれる15歳〜64歳の仕事に中心的に従事する年齢の人口については、2050年までに3200万人も減ると言われています。では、このグローバル化と少子高齢化(以下、少子化)はどのように関連しているのでしょうか。キーワードは「マーケット拡大」、「人材流通」、「イノベーション」の3つです。




マーケット拡大

グローバル化が進むと、企業が海外に進出するというのは分かりますよね。では、少子化の場合はいかがですか。少子化が進み、人口が減っていけば、それは経済にとっては、国内の消費者の数が減っていく、つまりマーケットが縮小し、経済が衰退するということを意味します。日本に留まっていれば、ビジネスが成り立たなくなる状況です。そうなれば、ビジネス規模の維持拡大のためには、否が応でも外にマーケットを求めていくしかないですよね。しかも、世界は発展途上国を中心に人口が増えています。日本から出なければ消費者減少、海外に出たら消費者増加、、、どちらを選ぶか悩むまでもありません。考えようによっては、「グローバルだから海外に出ていくようになった」というだけでなく、「少子化によって海外に出ていかなくては立ち行かなくなったからグローバルになってきた」ということも言えます。

人材流通

グローバル化により、日本人が海外で働くことが増えるだけでなく、一方で、外国人が日本で働くことも増えていきます。これも少子化ということを起点に考えてみましょう。少子化ということは、働く人も減っていきます。「労働人口の減少」「労働力不足」と言われることですね。牛丼チェーンが「ワンオペ」(一人営業)で従業員に過酷な労働を強いていたり、また人手不足により次々に店舗を閉鎖したということも大きなニュースになりました。外食産業は多くが似たような問題を抱えており、また労働力不足は他業界においても深刻な問題です。現在の働き手だけで足りないのであれば、新しい働き手を開拓するしかありません。そのターゲットは、外国人、シニア、女性の3つです。実際に、政府の産業競争力会議では「グローバル経済社会の中で持続的成長を実現するためには、女性・高齢者・若者など日本人の労働参加率を高めると同時に、グローバル戦略など産業競争力強化策の一つとして、外国人材活用を重要な成長戦略として位置づけることが重要である。」と述べています。成長戦略ですよ、成長戦略。しかもこれは下線部付きで強調されているのです。

  まず、女性の社会参画は今後の教育の中でも超重要課題の1つであり、日本の浮沈のカギを握っているといっても過言ではありません(また別のページで話します)。次に、シニア層の再雇用もどんどん増えています。おそらく私が定年を迎える数十年後は、シニアでも求人が当たり前のように出ているのではないでしょうか。そして、外国人の登用ですが、それはグローバル化に対応するためだけではなく、少子化で不足する労働力を確保するという目的もあります。実際に、特に介護や看護の分野では少子高齢化に向けてアジア近隣諸国から労働力を確保しようという動きが活発に見られます。2025年には「介護職で30万人の人手不足」なんてニュースも出ていました。2020年の東京オリンピックに向けても、建設、観光を中心に外国人労働者の確保は対応せざるを得ません。菅官房長官が2014年度中に「外国人の活用について緊急措置を定める」と話しています。また、経済産業省によると、現在は外国人労働者の比率がわずか1%程度なのに比べて、このままの生産年齢人口を維持するのであれば、2030年には全体の25%に当たる1800万人もの労働者を外国から確保する必要がでてくるとのことです。

イノベーション

イノベーション・・・英語の意味は「刷新」とか「革新」という意味ですが、もう少し付け加えれば「新しい視点と切口で、新しいものを生みだす」ということです。逆に、もっと簡単に言えば「新しいアイデア」でしょうか。21世紀は「アイデアの時代」「イノベーションの時代」という人が多くいます。なぜでしょうか。やはり人口減少によるマーケット縮小が1つの要因です。消費人口が減っている中で、いくら売れ筋商品でも売れる数が減っていくわけですよね。では、消費人口が減っていても、売り上げを伸ばすにはどうしたらよいですか。同じものを売っていても、頭打ちです。だからこそ、ここでアイデアなんですね。新しいものを作り、「新しい価値」を付与することが大切なのです。新しく価値があるものなら、売れるのです。グローバル進出が「新しいマーケットの開拓」であるのなら、イノベーションは「新しいニーズの開拓」と言えるでしょう。そうです、自分でニーズを作ってしまえば良いのです。

しかも、時代はグローバル。「これまでの価値観は通用しない」なんて言いますよね。そこで「どうしよう」と頭を抱えてしまうのではなく、「じゃあ新しい価値観を探求しよう」、いやむしろ「新しい常識を私が創っちゃおうか」ぐらいの勢いと発想の転換が必要なのです。もちろん、新しいアイデアで既存の商品を改良していくという地道な進化も大切なのですが、今までになかったものを生み出す突然変異みたいなことにも恐れずにトライする姿勢がほしいのです。

ここで再度「イノベーション」を定義すると、「新しい価値を作る」ということだと思います。スティーブンソン、エジソン、アインシュタイン、スティーブ・ジョブズ、、、これらは新たな価値を作ってきた人たちです。もちろん、このような一部の天才に私たちがなれということではありません。でも、彼らの物事を見る姿勢には学ぶことが多くあるはずです。既成概念を壊す力、変化を求める力、自分の目で世界を見て、自分で課題を設定する力、そこに新たな価値を創る力、そのようなものが求められていくのですね。

まだまだ序章 − 20年後、30年後を見据えて


急激な時代の変化にオロオロしてしまい、私たちもついていくのがやっとですが、グローバル化、少子化はまだまだ始まったばかりです。ようやく第一波がやってきたばかりです。国立社会保障・人口問題研究所が出した2012年推計では、2030年には11600万人、2048年には9900万人、2060年には8600万人と算出しています。人口統計は、子供が2歳とか3歳になってこの世に出てくることがない以上、急に増えることがない資料なのです。出生率が大きく上がらない限り、間違いないことです(唯一、理論的に増える方法は外国人移民の流入だけです)。つまり、これから次々と本格的な第二波、第三波がやってくるのです。これから20年後、30年後の社会はどんな社会になっているのでしょうか。私たちは「時代の変化に合わせて教育する」とよく言いますが、はたして言葉だけでなく、その変化の中身をしっかり認識しているでしょうか。そして、その変化を生徒が巣立つ20年後、30年後に焦点を当ててイメージしているでしょうか。教員として、目の前の教育も大切ですが、その未来をみつめるビジョンも大切にしていきたいですよね。


参考資料

  • 野口 尚(厚生労働省外国人雇用対策課) 「わが国における外国人労働者を巡る状況について」 2010年
  • 長谷川 閑史 「持続可能な成長の確保に向けた外国人材活用のあり方」(産業競争力会議) 2014
  • 厚生労働省 「平成26年人口動態統計月報年計(概数)の概況」 2014
  • 国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(平成241月推計)」 2012年 
  • New Sphere 「日本、外国人労働者本格活用へ緊急措置 五輪、復興…建設業界の人手不足に対応」 2014127
  • Virginia Heffernan. “Education Needs a Digital-Age Upgrade.” The New York Times, August 7, 2011.
  • 「介護職員「25年度に30万人不足」 厚労省調べ」 日本経済新聞 2015116

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