フロント側が希望を聞かずに担当国を決める会議も多いですが、大会によっては大使が担当国の希望を出すことができます。リストが与えられ、そこから選ぶ場合もあれば、縛りがなくどの国でも希望できる場合もあります。
国がどこになるかで多少の有利不利もあります。そういう意味では、国選びから勝負が始まっているのですが、そうは言っても、強いペアはどの国になっても抜群に強く、国選びで勝負が決まることはありません。
しかも、希望通りに行くかは分かりません。あまり神経質にならずに、「どこなってもやるべきことは同じ」という気持ちでいきましょう。
そう言っておきながら、一応、国を選ぶ際に検討する項目をざっと並べてみました。
発展国のメリットは、まずネットも含めてリサーチがしやすいということです。
いわゆるメジャーな国ですので、統計、新聞記事なども含めて、色々な情報を容易に検索することができます。またOECDの加盟国であれば、OECD関連の資料は山ほどあります。また日本に近い生活・経済レベルであることが大半で、イメージがしやすいということも利点です。
ただし、大きい分、その解決の責任を負う部分が大きかったり、厳しいポジションに立ったりすることも多く、ハードなネゴシエーションが必要になります。
その点で、私の生徒たちは大国を嫌う傾向があります。
発展途上国はリサーチがしづらい国もありますが、多くの議題の場合、その課題を直に抱えている国で、リアルにその問題を語ることができるというメリットがあります。
日本にとっては、他国の問題でも、その国にとっては、「自国の問題」であり、貧困や和平問題、経済問題などとダイレクトにリンクしており、立場を明確にしやすいということが言えます。
ただし、極端にマイナーな国だとリサーチで本当に苦労します。過去に難民問題で初心者ペアがマダカスガル、モザンビークという国を担当したことがありましたが、とにかく自国に関する情報がなく、かなり苦労したことを覚えています。
その課題を作り出している国か、その被害を受け入れている国か、その課題解決に積極的に働きかけている国か、ということを考えます。
例えば、難民問題であれば、難民を出している側なのか、受け入れている側なのか、どちらでもないのか(受け入れているが小規模など)、という大きく分けて3つの関与があります。
軍縮であれば、武器を作っている国、武器を使っている国、大きく被害を受けている国、過去に戦争経験がある国、など、それぞれ立場が異なります。
ある程度、そのあたりを考えて国の希望を出します。
ニューヨーク大会出場した経験のある生徒は、「主要国よりもその問題で被害、損益を被っている国のほうが、自分たちの困っている現状をより明確に主張でき、より明確に解決策を提示できるから良い」ということを言っていました。
議題によっては、資源や技術といった要素が入ってきます。
例えば、核燃料や地球温暖化、エネルギー問題で言えば、オーストラリアは資源を豊富に持っており、かつ核エネルギーに頼らず、しかも再生可能エネルギーの使用に積極的に関わっています。
また日本は、あらゆる問題において資源はないけど、経済力と技術力は抜群に持っている国です。
このように、資源や技術の保有が、その問題に大きな影響を与える場合があり、そのような国が中心に議論が回っていきます。
他にも地理的特性や政治、経済の状況など、議題によって関連性が高くなるものもあります。
これは私が指導する際には非常に重視する点です。
複数のシナリオを描ける国なのかどうかということです。
模擬国連は高いレベルになると主導権の争いも激しくなりますが、その際、1つの動き方しかできないと途中で想定が崩れてしまったり、行き詰ってしまうことがあります。
一方で、政策立案やグルーピングにおいて「中間的な立場」を担保でき、なるべくいろいろなアプローチを保持していれば、会議全体の流れに合わせて柔軟に動けます。