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思考のレベル

6つの例題で考えてみよう

前のページで知識だけでなく、知識に思考力、創造力を加えていく、という話をしましたが、ここでは、具体的に例を出してみます。

首都をベースに問題を出してみましょう。6つのレベルを用意しました。ブルームのタキソノミーが最近話題になりますが(それについては、またどこかで触れますが)、今回はそれを多少意識してなくはありませんが、必ずしもそれを基にしたものではなく、あくまでも、知識から知識の編集、そして価値の創造へ、という段階をイメージしやすいものを考えました。

レベル1 「フランスの首都はどこか答えなさい。」

これは、単に知っているかどうかの問題です。最もシンプルな知識の問題と言えるでしょう。

レベル2 「フランスの首都の特徴を答えなさい。」

これも知識の問題ですが、人口から地理的特性、政治、文化など、何が重要なのかを判断して、答えていく問題です。

レベル1では、どの知識を引っ張ってくるか考える必要がありませんでしたが、レベル2では、同じ知識の問題だとは言え、どの知識を引っ張ってくるかは自分で判断する必要があります。知識検索能力と言えるでしょうか。

そういう意味では、事実をいろいろな方法で整理しなくてはならず、結構高度な問題なのです。これが「地理的な特徴を答えなさい」という問題なら、引き出す知識にヒントを与えているのでレベル12の間になるでしょう

レベル3 「日本の首都とフランスの首都を比較対照しなさい。」

東京、パリの2つについて、知識の整理をした上で、類似点、相違点という分析を生み出さなくてはいけません。だんだんとレベルが上がってきているのがわかりますか。

このレベル3までは、事実の考察にとどまっており、従来の知識型の授業と言えます。

レベル4 「フランスの首都がなぜパリなのか、答えなさい。」

さて、どう答えますか。

まず思いつくのが「ナポレオンが…」、「フランス革命が…」といった歴史的な考察ですよね。でも、そもそもその前からパリはフランスの中心地だったわけで、歴史的にもっとさかのぼらないといけません。さらに、地理的な特徴や資源、他国との流通ルートなども要因とし外せないでしょう。

当然、1つの要素だけで答えられるものではなく、いろいろな考察が必要になります。その中で、それらの知識を編集し、「なぜフランスの首都がパリなのか」という新しい答えを生み出さなくてはいけません。

「知識をどう使うか」という観点から考えると、レベル56よりも、レベル4が一番難しいかもしれません。

レベル5 「パリを首都という観点から評価しなさい。」

      「パリの課題を設定し、その解決策を提案しなさい」

これは、レベル4の知識の編集をもとに、自らの意見を述べるというものになります。

ここ
では「評価する」ということなので、その評価基準も明確にして、答えなくてはいけません。 つまり「よい首都の条件は何か」という問いにまず答えていないと、この問題はできません。

さらに、ここで「首都とはそもそも何か」という哲学を的な議論ができているとなおさら良いですね。「課題解決」については、本来は価値創造でもあるので、レベル6に分類できるものですが、ここでは便宜上5に分類します)

レベル6 「新たな首都の価値を考えなさい。」
     「首都に代わる新たな体制を提案しなさい。」

この問いに必要なのは創造力でしょう。アイデアの創造でもあれば、問いにある通り、新たな価値の創造ができるか、ということになります。


6つのレベルをまとめると


レベル1  知識 
レベル2 レベル1 + 知識検索
レベル3 レベル2 + 分析
レベル4  レベル3 + 知識の編集
レベル5 レベル4 + 課題解決 
レベル6 レベル5 + 価値創造

これについて2つポイントがあります。

まず1つ目として、これらのレベルは実ははっきりと区切れるものではありません。実際にいろいろな問題を分類しようとすると、明確に分けられないものもあります。

2つ目は、これにあまり惑わされてはならないということです。あくまでも指標であり、目安です。「確かに知識だけの教育ではダメ」ですし、これらを意識すると、より一層幅も広がり、教育の可能性も広がるでしょう。そういう程度でとらえてくれれば十分です。そして、そういう程度でとらえるだけでも、ずいぶん教育が変わると思いますよ。


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