2015年6月に私の所属する学校で、アクティブラーニングをテーマとした全国私学研究会が行われました。私もこの学校に移籍してまだ2ヶ月でしたが、教科を代表して英語科の模擬授業を披露しました。
ここから何回かにわたり、それをモデルレッスンとしてその時の授業をお示しするとともに、その時に私が考えていたことや課題として感じていたことを共有したいと思います。
なお、MAX勉強会でもこの模擬授業を題材にワークショップを行っていますので、レポートも参考にしてください。
下の写真はイギリスのキングクロス駅の写真です。
キングクロス駅と言うと、ハリー・ポッターファンなら「ビビビ」とわかるでしょう。ハリーが現実の世界から魔法の世界に行くあの「9と4分の3」というプラットフォームがある「あの駅」です。(そういう私自身は実はハリーポッターはテレビで2回見て、2回とも後半寝てしまい、全くビビビとはなりませんでしたが。)
ある医学部の入試でこんな問題が出されました。「この写真について感じることを800字で答えなさい」といったような趣旨の出題がなされたということでした(字数などの詳細は正確ではないかもしれませんので悪しからず)。
模擬授業は、この写真を使ってアクティブラーニングを教科として実践するということでした。私はこれを中3女子クラスで行うことになりました。担当学年ではなく、赴任してきて2か月の私にはほぼ全員初対面です。
もう1つ前提があります。授業は2時間続きで組まれ、1時間目は「総合的な学習の時間」という枠で、写真の分析を行います。どういう写真なのか描写し、その中で事実と意見を分ける、そして抜き出した事実をグループ分けする、といったような感じです。イメージが伝わりにくいと思いますが、簡単に言うと、1時間この写真とにらめっこして分析をするという授業を行うわけです。
私の授業は教科の実践ですので、2時間目に設定されていました。1時間目の事実分析をもとに、さらに上の思考スキルを使わせながら、英語の授業を進めていくということです。
この模擬授業のオーダーを受けた時、単に写真を題材に授業を行うのではなく、課題解決か異文化理解のいずれかのアプローチを組み込もうと考えました。確かに「え、この写真で授業?」と最初は戸惑いも多少ありましたが、これまでもグローバルキャリアや英語セミナーというプログラムをずっと設計してきたので、その場でいくつかのレッスン原案が頭に浮かびました。
そして、結局のところ、ALの肝である課題解決のアプローチを組み入れてレッスンを作ろうということに決めたのです。
この授業を設計するにあたって、自分の中で課題となったことが3つあります。
今回のレッスンは、グローバルキャリアのような本格的な課題解決プログラムではありません。また模擬授業であるため、あらかじめ予備レクチャーや課題分析などをすることはできず、50分で完結させなくてはいけません。しかも、生徒たちは課題解決のアプローチはほぼ初めてです。
加えて、中3ですから、認知レベル、思考レベルも限られていますし、何よりも英語の言語活動レベルが限られています。その制約の中で、どのように課題解決に取り組ませるのか、という課題をまず最初に設定しました。
アクティブラーニングの模擬授業ではあるものの、あくまでもこれは英語の授業です。課題解決だろうが何だろうが「英語の授業」としてのクオリティーをしっかり保たなくてはいけません。
模擬授業のような単発の授業では、ディスカッションをはじめとしたオーラルベースになりがちです。確かにそうやるのが楽ですし、無難ですが、英語教育の実情とはかけ離れていて、非日常的な1時間のパフォーマンスになってしまいます。現場の英語教員としてのプライドが働いたんでしょうね。「英語教育として4技能のバランス・統合にこだわりたい」、そして「日常の授業カリキュラムの中でも実践できる模擬授業にしたい」という思いがありました。
前提の部分で述べた通り、1時間目に事実分析をし、その後、2時限目に私の授業が設定されています。この写真を題材にただ活動に取り組むのではなく、やはり1時間目でやった事実分析と一貫性を持ち、それを最大限活かせるようなレッスンにしたい、と考えていました。言い換えれば、どのように事実分析から課題解決へ1つの流れを設定するのか、という課題です。
では、これらの課題を踏まえて、次のページからレッスンを紹介・解説します。