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AL実践例 全国私学研究会模擬授業A

さて、ここから当日の様子を授業前から授業終了まで、ご紹介します。
*なお、この授業の使用言語は最後の部分を除いて英語です。

生徒と初対面

私が今回授業をするのは中3女子クラス。授業前、昼休みに教室に行き、挨拶してきました。生徒と初対面です。

教室に入るなり、ハイテンションで「Hello, everybody!  Nice to meet you!  My name is Max Kohei Seki …」と。・・・決めていたんです、英語で最初からガンガンやろう、と。

初対面のクラスで、しかも公開授業という特別な雰囲気、さらに英語で1時間活動をさせるわけですから、
こちらのパワープレイで雰囲気を一気に作り上げようと思っていました。結構インパクトがあったと思います。誰、これ?みたいな。しかも、自己紹介がMAXですからね。笑いも結構とれ、こちらの呼びかけに大きな声で応えてくれて、、、予想以上にドカンと雰囲気を作れました。

私も「このクラスなら楽しく授業できるぞ」と私もとても前向きな姿勢で授業に臨めました。

なお、このクラスには帰国生の生徒がいますので、1つのグループに1人帰国生に入ってもらい、少し英語をリードしてもらうように頼んであります。彼女たちも一緒に議論に参加するのですが、分からない単語を教えてあげる、ディスカッションのファシリテートをする、といった具合です。

導入 − 間違い探し

〇活動の様子

黒板や机からも題材の写真を片づけた状態から始めます。1時間の授業の感想を聞きつつ、「もちろんどんな写真だったか覚えているよね。これから君たちが本当に一生懸命取り組んでいたかチェックします。」と、投げかけます。シンプルな写真ですから、生徒たちは「覚えてますよ」と自信満々に答えます。

そこで、下の写真を配ります。「この写真は原画いくつ違うところがあるか、グループで話し合ってください。」



実際、生徒たちは、単語レベルでありながらも、絵を囲み、指さしながら、話し合いをしてくれました。私が回り、「手すり」や「階段」など難しい言葉を生徒から聞かれたら、黒板に”handrail” “stairs” など書いていきます。

開始から34分経ったところで、全体の答え合わせに入ります。「いくつ間違いが見つかった?、、、1つ?、、、2つ?・・・」という感じで生徒に手を上げさせていきます。その後、生徒を指名し、間違いを説明させていきます。黒板の写真にマルを付けながら、全体にわかるように答えを共有していきました。

全問正解だったグループはいませんでした。「ほら、記憶ってあいまいでしょ」とドヤ顔で締めくくりました。ちなみに、みなさんはいくつ間違いが見つかりましたか。・・・答えは6つです。よく見てくださいね。・・・中には、7つ見つかったというグループもありましたけど。

〇活動設計と解説

この活動を設定した意図は、1時間目で行った事実分析を復習しながらも、ディスカッションのワームアップをするというものです。特に、前の授業の流れを引き継ぎ、事実分析を深めながら授業を発展させるという部分に重点を置いています。

実は、数日前まで「写真を絵で復元する」という別のタスクを設定していました。ペアになって、1人が口頭で写真を説明し、もう1人がその説明の通りに絵を描いていく、というものです。

しかし、まず単純に「おもしろくない」と思いました。絵を描くことがタスクだと、ペンを握る間に黙ってしまう時間も増えてしまうのではと懸念したのです。しかもペアの2人とも1時間目の授業を受けており、この写真をよく知っているわけですから、説明を聞かなくても絵を描けてしまい、そもそも活動をする意味がありません。

そう思うと、生徒が楽しそうに取り組み、生き生きと英語を飛び交わすイメージがわかなかったのです。1時間の授業の導入が盛り上がらなかったら、その雰囲気をずっと引きずってしまう、、、もっと盛り上がり、もっと事実分析を活かせる活動を設定しよう、、、そう思ったのです。

そこで、この間違い探しのタスクプランに変更しました。間違い探しはゲーム性をもあるし、1枚の写真を囲んで、話を進めていくので、英語もどんどん出る。「これじゃない?」「これは違う」とワイワイ盛り上がるイメージが浮かびました。間違った答えをいじってあげれば、笑いもとれる。

しかも、
1時間目の事実分析を活かすのにも有効でした。1時間目のレビューができると言うだけではなく、あれだけ「客観的な事実分析」をしていたのに、記憶というフィルターを通した途端、曖昧で主観的なものになります。それぞれの記憶も違えば、再生の角度も異なります。事実は1つと思っていたのに、事実が2つも3つも出てくる。

しかも、間違いが何個あるか分からないから、事実と思っていたことすら、「これ違ったかも」と疑い始めるのです。まさに、裁判で証人が混乱するように、整理したはずの事実がかき乱されたようなもので、「そもそも事実って何よ」ということにも突っ込める。

さらに裏を話すと、実はこの間違い探し活動は2日前ではなく、計画当初に頭に浮かんでいたものなのです。しかし、私の手元にはJPEGの画像が1枚あるだけで、写真の加工は無理だと思っていたのです。

でも、上述のとおり、タスクを変更したいと思い、400%に拡大して、消したい風船や手すりの周りにある色を引き延ばしたり、、、いろいろ試してみたのです。帰りの有楽町線の車内でノートパソコンを開き、ちょこちょこ絵をいじっている姿は異様だったかもしれませんが、そんな地道な作業で写真が完成したのです。

さて、英語活動という観点から、活動の中身について焦点を当てますが、この間違い探しですが、いわゆる
Information Gapと言われる活動です。間違いの部分を言葉にして指摘すればタスクが完成するため、文レベルではなく、英単語をつなぐ程度の発話になってしまいます。日本語でも間違い探しするときはともすると名詞だけの会話みたいな単純な発話が多いかと思います。あくまでも、この活動は導入なので、それでも構いません。

仮に発話のフォーマットを教えて、文で議論することを求めようとしても、このレベルの活動だと「間違いを探す」というタスクに集中しがちで、うまく発話を促せないことのほうが多いように感じます。もし文レベルの活動を求めたいのであれば、タスク中は単語レベルと割り切って、その後に答えをシェアするときに、文レベルでの発話をさせるというのが効果的でしょう。

また、細かい点ですが、「違いを見つけてみよう。 “Let’s find differences.”」という指示ではなく、あえて「How many differences can you find?」という「間違いの数」をタスクにしたところもこちらの意図があります。

「違いを見つけてみよう」だと英語が苦手な子は、説明が滞ってしまい、答え合わせも参加できないと思ったのです。そこで「いくつ見つけたか」というタスク設定にし、まずは
英語のレベルに関係なく全員が活動に参加できる設定にしました。

これは
Can-Doに基づいたタスク設定と言えます。

レベルの低い生徒には「間違いを探し、その数を答えることができる」、レベルがやや高い生徒には「間違いを探し、それらを身振り手振りを交えて説明することができる」、もっとできる生徒には「間違いを比較対照しながら論理的に説明することができる」といったように設定できます。

もちろん、指示やタスクを微妙に変えたからと言って、ディスカッションの中身やベクトルが変わるということはありません。ここで説明しているほど、大した作用もありません。でも、答え合わせの時に、ぼーっと座っていて、英語ができる子に任せてしまう生徒がでてほしくないな、というところからこのように設定しました。

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