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AL実践例 全国私学研究会模擬授業B

展開1 課題解決 その1

○活動の様子

ここから授業の中心部、課題解決に入っていきます。

シチュエーション1は、写真が
課題解決の前だという設定です。「写真 → 課題解決」というディレクションです。「この駅をより良い駅にするために1つだけ変えるとしたら、何を変えますか」と問いかけます。

そして、このディスカッションでは、こちらからディスカッションのフレームワークを与えます。「I’d like to change ○〇 because …」というフレームを使って、話をさせていきます。

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分ほどグループで話し合いをさせ、その後、全体で共有をします。「暗いから電気を増やしたい」「疲れるからエスカレーターにしたい」「赤が怖いから壁の色を変えたい」など、そんな意見が出ました。

展開2 課題解決 その2 

○活動の様子

次に本題のシチュエーション2ですが、今度は写真を課題解決の後と設定します。そして何が問題で、どう解決されたのかをさかのぼって考えていくのです。今度は「課題解決 → 写真」というディレクションになります。

ここで「市長の手紙」なるものを配ります(PDF:ハンドアウト)。もちろん、本物の市長からの手紙ではありません。こちら側で作成したものです。文末のサインも私が勝手にそれらしく書きました。

内容は課題解決に関する市長からのお礼の手紙です。あらかじめポイントとなるReading Questionをいくつか提示し、3分ほど読む時間を与えました。その後、全体でReading Questionsの答え合わせをしながら、簡単に内容の確認をしました。

そして、次にもう1枚ワークシートを配布します
(PDF:ハンドアウト)。このワークシートに沿って、過去形、現在形を使いながら対比をし、課題設定を考えるというものです。

ディスカッションは10分です。うまくディスカッションを進めるグループもあれば、課題が設定できない(課題設定ということが分からない)グループや、具体例が出せないグループもあり、教員は手助けをしながら進めていきます。

ディスカッションが終わると、いくつかのグループを指名して、全体で内容を共有します。「危険なのが安全になった」「汚いのがきれいになった」「不便だったのが便利になった」という3つの課題設定が多かったと記憶しています。

最後に、授業のレビューをしつつ、アドバイスを与え、授業を終了しました。

なお、この次の授業の流れとして(模擬授業のため実際はこの1時間で終了ですが)、ディスカッションの内容をフォーマットに沿ってライティングとしてまとめ、それをプレゼンテーションをする、ということに設定しました(PDF:ハンドアウト)

活動設計と解説

課題解決には要因を突き詰めるバックシフトと解決策を模索するフロントシフトがあります(参照:課題解決プログラムのモデル)。

その中で、シチュエーション1は、@何が課題なのかを設定し、Aなぜそれを解決したいのかを述べるという活動を行いました。モデルで言うと、
Whatの設定とWhyのフロントシフトに焦点を置いた活動です。



この活動は単純でやりやすいものだったと思います。題材もいかにも問題がありそうな写真ですから、課題設定も特に難しくはありません。さらに、ここでは解決策の提示までは求められていませんので、印象で思ったことを口にすればそれで充分です。

今回はフォーマットに沿って「because…」で理由づけをすることになっていますが、これは、本校が
Why? Because …が言える生徒を育てる」と標榜しているので、せっかくならそのフォーマットを入れ組もうと思ったからです。

シチュエーション2は、@課題の設定をし、Aどのように解決されたのか、という2点が議論のポイントです。これも、
Whatの設定とHowのフロントシフトということになります。



しかし、写真は課題解決後ですから、遡って課題解決のプロセスを設定しなくてはいけません。
解決策を探るフロントシフトの議論はいわば未来志向ですが、それを逆に過去にさかのぼるという点で思考と発想の逆転が生じ、想像力や創造力が要されます。

この写真を使って課題解決プログラムを作るとなると、普通は「この駅をより良い駅にするにはどうしたらよいか」という、シチュエーション1の活動になるでしょう。しかし、それだと当たり前すぎますよね。より高次元の思考を求め、
発想の逆転を促したいのであれば、シチュエーションそのものを逆転させてしまえばいいと考えたのです。

この活動を思いつくのは意外と簡単です。上のスライドの通り、課題解決のモデルのどの位置に写真を持ってこようか、そしてそのモデルのどの部分に焦点を当てようかと考えるだけです。確かにモデルもなく、やみくもに活動を作るのは難しいと思います。しかし、モデルがあって、それに状況を当てはめていくだけなので、慣れればできるようになります。

そして、シチュエーションを逆転させたのにはもう1つ大きな意味があります。実は、ここに
1限目の事実分析を突き詰める」という要素があるのです。

赤い丸い壁も、風船も、手すりも、男の人も・・・問題が解決された後の「素晴らしい駅」の一部であり、そうなった理由があるはずです。そう思ったとたん、なんとなく見えていた「単なる事実」から理由というものが浮き出てきます。すると、今まで見ていた事実の見え方が変わってきます。

どのような問題があって、どのような課題解決がなされ、今の形になったのか、、、イマジネーションが必要です。そこで、これまでなんとなく抜き出していた「赤、丸い壁、手すり、赤い風船」といった事実を再度考えていくのです。「なんで赤なんだろう、なんで壁が丸いんだろう、赤の前はどんな色だったんだろう?」といったように、
事実を突き詰めて考え、そこにWHYを投げかけることで答えが出てきます。

「思考レベル」のページで話した「フランスの首都はどこか」から「フランスの首都はなぜパリなのか」という問いの変化と同様に、
目の前にあるものから「なぜ」を考えていく、それはこの活動でも同じです。


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