課題解決のプロセスを9つのステップに分けて、見ていきましょう。
まず、情報を集めて、何が起きているのかという分析をします。できれば、この段階では課題を設定せず、まず先入観のない目で事実を確認していくことが良いでしょう。情報取集力、処理力、分析力、クリティカルシンキングなどが求められます。
次に、これらの情報や分析に基づいて、課題を設定します。与えられた課題に取り組むだけでなく、「そもそも何が課題なのか」、自分たちで考える力が求められます。あわせて、ここで課題解決のゴールを設定することも大切です(当たり前ですが、ゴールがなければ、課題って存在しません)。
設定した課題に対して、まずはバックシフトでWHYとHOWを探ります。つまり、「なぜ、どのようにこの課題が生じたのか」という分析です。
次に、課題を作り上げた原因を探っていきます。短絡的に「これが原因」と決めるのではなく、分析をさらに突き詰め、因数分解していくことで、その根本にある要因を特定します。そして、発展編では、この因数分解を「課題の書き換え」というものにつなげます。
ちなみに、多くの社会課題、自然課題は、因数分解すると「人口問題」「文化の問題」が根底にあるのが分かります。逆に言うと、人口問題、文化の問題に目を向けずに、課題解決をするということは、表面的なアプローチにとどまってしまうということになります。
次に、フロントシフトでWHYとHOWを探求します。「なぜ、どのようにその課題を解決するのか」という議論です。しかし、本物の課題はとても複雑で、解決困難なものばかりです。どんな解決策を講じても全ての課題が解消されるわけではありません。単なる課題解決をシュミレーションすることに満足せず、さらに課題を探求することが重要です。
これは、課題の本質を見抜き、課題設定そのものを書き換えるというプロセスです。課題解決を突き詰めるうちに、最初に課題と思っていたことが実は本質的な課題ではなく、もっと根本的な課題が見えてくる、ということがしばしばあります。それに合わせて、課題設定を上書き保存しながら、課題解決を修正していくという作業が生じてくるんですね。
この課題の書き換えについては、次のページで例題も含めて、考えていきます。
課題解決はループします(←これ重要)。課題と解決の間をぐるぐる行ったり来たりしながら続いていきます。1つの問題が解決しても、その解決策が新たな課題を連れてくるということです。やっと解決したと思ったら、それが次の課題解決のスタートになるのです。
皮肉にも、課題解決は課題発生のプロセスでもあるのです。場合によっては、課題を解決したがゆえに状況が悪化したり、課題の軸がほかにシフトしてしまったり、ということが起きます。
実際の課題解決でもまさにそうですよね。例えば、シェールガスといった新エネルギーが発見されて、エネルギー問題が解決されたかと思えば、それをめぐる利権や競争が勃発し、新たな課題が発生します。
ちょっと変な例ですが、恋愛で言うなら、両想いの幼馴染に告白してしまったことで、二人のバランスや距離感が崩れてしまい、「こんなことなら友達のままでいたかった」「でも、もう昔には戻れない」なんて言って別れてしまうということもあります。
このループこそ、課題解決の醍醐味です。課題解決がループする中で、試行錯誤しながら探求をつづけることで、一歩ずつ課題解決の本質に近づいていくのです。
課題解決は自己満足ではいけません。人々に新たな価値を付与して、初めて意味のある課題解決と言えるでしょう。「この課題解決は誰にとって価値のあるものなのか」という視点から、「具体性」「実現可能性」「グローカル牲」「社会貢献」「生産性」など、あらかじめ設定していた基準やコンセプトをもとに、価値の評価を行います。
自分たちの出した解を、さらにクリティカルに評価し、新たな価値を追求します。課題解決がループする中で、より良い解決策はないか、新たに生じた課題にもアプローチできる解決策はないか、といったような探求を続けます。究極のゴールは、価値を高めるのではなく、新たな価値構造を創ってしまうことです。