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リベラルアーツという謎

私とICUとリベラルアーツ

リベラルアーツ。

教育改革
が叫ばれる中で、この言葉も耳にすることが増えました。昔からある言葉ですが、私たちの耳になじんできたのはそんなに前のことではありません。2010年、いやもう少し後かもしれません。

ところが私自身にとっては、この言葉は真新しいものではありません。私とリベラルアーツの出会いは1998年、私が大学に入った時です。そして、それ以来、頭の片隅で「リベラルアーツって謎だな」と思ってきました。

ここではその経験を基にした試行錯誤が多くありますので、そのバックグラウンドを理解していただくために、まず私の大学の話をさせていただきます。

私の出身大学は国際基督教大学です。一般的にICUと言われるところです。関東圏外ではそこまでメジャーではないかもしれませんが、近年は皇族の子女が入学するなどで話題にもなりました。巷では「英語のレベルが高い」「入試が独特」ということでよく言われます。

ICUはアメリカの教育価値観に基づいて設立されているため、日本の大学であって日本の大学ではない部分が色々あります。ある意味アメリカかぶれです(私はかぶれるのが大好きでしたが)。

そして、さらに重要な1つとして、リベラルアーツが開学当初からその教育の中心理念として置かれており、ICUは日本のリベラルアーツの代表とか総本山とかいう言われ方をします。

私の入学した時は教養学部という1学部制でした。ICUの教授が「教養学部とあるのはICUと東大だけです。でも、本当のリベラルアーツはICUにしかありません。」というようなことを言っていたことを覚えています。学生ながらに誇りに思ったものです。

あれから時が過ぎ、今では秋田の国際教養大学(AIU)、早稲田の国際教養学部、立命会アジア太平洋とリベラルアーツを視野に入れる大学が増えてきました。これからはさらに、千葉大学の国際教養学部の新設に見られるように、スーパーグローバル大学の推進事業とともにグローバル型&リベラルアーツ型の教育が1つの方向性を作り出していることは間違いありません。

一方でICU2005年には、米国リベラル教育協会から認証を受けたほか、2008年から教養学部からアーツサイエンス学部になり、さらにリベラルアーツを推し進めました。

ICU名物の英語教育プログラムも私が学生のころは「地獄のELPEnglish Language Program)」とか呼ばれていましたが、今ではELAEnglish For Liberal Arts Program)とその名を変えました。地獄という部分は変わっていないようですが。。。




リベラルアーツの謎と5回の対面

私のこれまでの人生の中で、リベラルアーツの謎を考えるきっかけがこれまでに5回ありました。

1回目
は、もちろん私が
ICU生徒して過ごした4年間です。その時から、なんとなく付きまとっていたんです。

「リベラルアーツって何?」

上記のとおり、ICUはリベラルアーツ教育の先端を言っています。でも、中にいる学生はそれが何を表すのか、私も含めて大してよく分かっていませんでした。

学科の垣根が低いとか、一般教養が充実しているとか、柔軟な履修ができるとか、、、いろいろ言われますが、意識があったとしてもそんな程度です(今の学生はアーツサイエンス学部になって、昔よりは意識しているかもしれませんが)。

自分のやりたい勉強ができて、ある程度自由がきいて、頑張って勉強して卒業できれば、学生にとってはリベラルアーツが何だろうかいいちゃいいわけです。その分、分かったふりで、謎が残るという結果になりました。

2回目は、おおよそ2010年を過ぎたあたりからでしょうか、
「リベラルアーツ」という言葉がそれとなく教育現場でちらほら耳にすることが増えたことです。

日本語で「全人教育」「教養教育」という訳語がされていたので、そのせいもあって、ずいぶん色々な解釈でリベラルアーツという言葉が使われていました。グローバル、アクティブラーニングという言葉もあいまいで、好き勝手に解釈されていますが、このリベラルアーツはその比ではありません。日本語に直訳したら「自由な技術」、、、なんじゃそりゃー。ここまで実態がないと、何とでも解釈できるわけです。

特段中身がなくても「リベラルアーツ」「全人教育」というとかっこいいというのもあります。文系も理系も広く取らせるカリキュラムだと「リベラルアーツ」と呼ばれたり、受験勉強だけじゃなくて、人間教育も力入れているから「リベラルアーツ」と呼ばれたり。。。

そのような言い方は私にとって非常に違和感を覚えることでした。ICUで感じていたリベラルアーツと違うからです。ずいぶん安い言葉になったな、と正直思っていました。偉そうな言い方ですが、「え?リベラルアーツって何か知ってるわけ?」という思いです。

3
つ目のきっかけは
海外進学に取り組んだことです。前任校で、グローバル教育推進の一環として本格的に海外進学に取り組んだのですが、海外進学を始めると必ずこの言葉にぶち当たります。

「リベラルアーツカレッジ」

これは本当に謎に包まれていました。私も海外進学は素人ではありません。確かに研究大学、総合大学、リベラルアーツカレッジという区分があるのです。でも、じゃあその区分は何なのか?、、、周りの関係者や業者は当たり前にこの言葉を使いますが、突き詰めて議論してみると、やはり深く答えられないのです。

そこで、これまでに持っていたリベラルアーツの謎に拍車がかかり、ここから私の中で積極的な思考・リサーチが始まりました。

4
つ目は、
昨今の教育改革、SGHなどの動きです。ここで中高にもリベラルアーツという言葉が一般的に台頭してきました。最近は課題解決プログラムを含めて、「合教科型」「教科横断型」のものを含むことがリベラルアーツという多少の指標になってきてはいるようです。

しかし、
依然として、その解釈は曖昧かつ限定的で、陳腐と言わざるをえません。リベラルアーツの本質を得ていると言えるものはほとんどないというのが私の正直な感想です。なんとか

そして最後、5つ目は、
このウェブサイトの開設です。このウェブサイトのトップページにあるテーマは「グローバル×キャリア」です。

未来に向けた教育改革を突き詰めて考えいたとき、
グローバル、キャリア、リベラルアーツという異なる3つの輪が重なった感じがしたのです。

そこで、日本リベラルアーツの発祥の地ICUで実際に学び、この謎に向き合ってきたという少しばかりのプライドと「リベラルアーツを安っぽい教育プロパガンダから救わなくては・・・」なんていう陳腐な正義感を建前に、改めてリベラルアーツという正体不明の物体に焦点を当て、その教育的な意義と課題を私なりに発信していきたいと思ったのです



参考資料

  • 国際基督教大学(ウェブサイト)「自己点検評価」

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