「女子校だけはない」
大学院卒業後、「教職」としての就職を考える中で、そう思っていました。
それが今や、「自分のミッション」と言い切るほど、女子の教育にどんどんはまっているわけですから、人生は奇妙ですよね。
自分の希望は断然共学でした。というより、高校も千葉県の公立で共学という世界以外知らず、私にとっては「学校=共学」だったのです。
そもそも別学を考えたことすらありませんでした。私自身が男なので、「男子校」は選択肢として1割ぐらいは検討できる範囲にありましたが、さすがに女子校というのは全く持って考えてすらいませんでした。
性格的にも女子校が自分に勤まるとも思っていませんし、接点があるとは思っていなかったのです。
そんな私が女子校に就職したのは、タイミングと縁としか言いようがありません。
ちなみに、この話は採用を受ける側としては結構失礼で、生意気な話なのですが、その点は、エピソードとしてご容赦ください。
きっかけは単純。私学適性検査の結果を受けて、一番最初に採用試験に声をかけてもらったのが理由です(詳細はまたMy Storiesで書こうと思いますが)。
千葉県の公立出身者の私には馴染みのない学校だし、女子校と聞いて「ないわー」と思いましたが、とりあえず受けてみるか、という軽い気持ちで行きました。
しかも、所用により、採用試験にもかかわらず、私は途中で帰ってしまったのです。ドタキャンじゃないですよ。事情があって、それは事前に説明してありました。
そうは言っても、他の応募者が残る中で、一人途中で帰ったわけなので、当然落ちただろうと思っていましたが、想定外の結果をいただきました。
しかも、その後行われた面接で「本校に来てくれますか」と校長に言われ、私は正直に「分かりません。他の学校と比べて、検討してみます」と言い放ってしまったのです。
それでも誠意を持って対応していただき、熱心に声をかけていただいた中で、こうなると「これも縁だな」と思い、女子校ということに最後まで躊躇はありましたが、「とりあえずやってみて、合わなかったら辞めればいいか」といった感じで、いつの間にか女子校勤務になっていました。
実は、同時期にある男子校からも声をかけていただいていて、どうしようか考えていたのですが、結局先に声をかけていただいた学校を断る理由も見当たらず、そこに決まったという感じでした。
あの時、もう1つの学校が男子校じゃなくて、共学だったら、もしかしたら、いや、おそらく、女子校を蹴って、別の学校にしていたかもしれません。
女子校での勤務には多少の不安もありました。
大学院卒業後、9月から3月までの半年間、千葉県の私立で非常勤をしていました。そこで一番うまくいったのが女子であり、一方、一番折が合わなかったのも同じく女子でした。
そこで講師の先輩が言っていた言葉をよく覚えています。
一番簡単なのは男性教員が男子を扱うこと。二番目は女性教員が男子を扱うこと。三番目は女性教員が女子を扱うこと、いちばん面倒なのは、男子教員が女子生徒を扱うこと。
私も女子校勤務に際して「とにかく若い男性教員だからと言ってなめられないように」と思って気合い入っていました。今思うと、最初は相当肩肘張っていた気もします。
変な話ですが、女子校って、少年マンガに出てくるような「清楚なお嬢様の花園」的なイメージと、「猫の皮を剥ぎとったおじさん女子の集まり」的なイメージが混在しています。
「女子校に努めると女子に幻滅する」なんてうわさも聞いていたし。
さて、そこにいたのはお嬢様か、おじさん女子か。。。
始業式から私には衝撃でした。
校庭にずらーっとセーラー服が並んだのです。当時は1学年320人。中1、高1は翌日が入学式なので、その場にいませんでしたが、計1300人近くの女子が目の前にいるのです。
女子校なので当たり前なのですが、圧巻でした。ある意味、世間ではありえない光景です。
それを目の当たりにしたときに「あ、俺は本当に女子校に就職したんだ」と自覚したとともに、とてつもない違和感を覚えたんです。「俺、女子校無理じゃねーか?」と。
授業に行っても、当たり前ですが、女子しかいない。教室の右から左まで6列全てが女子です。今までの自分の視界とは異なる世界が広がっているんですね。しかもセーラー服というのが「女子」という存在をより一層際立たせ、ふと奇妙に思える時があったのです。
しかし、中身はただの女の子たちです。
お嬢様でもなければ、おじさん女子でもない。実に普通の女の子たち。たまに生意気で、たまに弱くて、おとなしい子もいれば、うるさい子もいるし。
多分、女子という分、精神的に大人で、やや複雑な構造もしていたのかもしれませんが、幸いに専任としては初めての職場なので、比較対象がなく、「こんなもの」と思ってしまえば、それが普通になってしまいます。
何よりも、私は学校と生徒に恵まれていました。
のびのびと活発に学校生活を送る生徒たち、人のために動ける心優しい素晴らしい生徒たち、自分の進路に悩み心を開いて相談してくれる生徒たち、そして夢に向かって一生懸命頑張る生徒たち。
「ここで一生教育に携わりたい」「この生徒たちのために頑張ってあげたい」という思いを素直に持てる生徒たちでした。
もちろんいろいろ大変な思いや嫌な思いもしましたけど、そんな愛すべき生徒たちに囲まれていたからこそ、女子教育の楽しさや難しさも実感できたのです。
そして、そんな私の女子教育への思いは、グローバル教育を担う中で、さらに加速し、使命へと形付いていくのでした。
(続きは次のコラムで)