留学先をイメージする際、何はともあれ、「どの国にするのか」ということから考えていくと思いますが、ここでは国を選ぶ「その前」に知っておくべき以下の3つの点を話していきます。
@ アメリカ系とイギリスという2つの系譜によって特徴が異なる。
A 大学の数が、クオリティーにばらつきがある。
B アジア圏という選択肢を考える。
ここから3ページにわたって見ていきましょう。
世界の大学には主流となる2つの系譜があります。アメリカ系とイギリス系という2つです。
これらの2つの違いをまとめると以下の通りです。
アメリカ系 | イギリス系 | |
期間 | 学部4年間、大学院2年間 | 学部3年間、大学院1年間 |
入学方法 | 日本からの直接入学可能 | ファンデーションコースにまず入学するのが一般的 |
専門性 | まずは幅広い教養を身に付ける 出願時は専攻が決まっていなくてもよい |
1年生から専門性を重視 出願時に専攻を決めておく必要がある |
アメリカは、「専門に捕らわれることなく、幅広く教養を身に付け、人間性を高めていこう」という考え方が主流です。いわゆるリベラルアーツ的な価値観が強いわけです。
日本にも一般教養と言われる授業がありますが、アメリカでは日本以上に教養というプログラムが重視されます。多種多様な分野を学ぶことで、多面的な視野を養うとともに、大学の学問に必要なマインドやスキルを身に付け、「学問とは何か」ということを系統だって考えていくのです。
そして、2年生後半もしくは3年生で専門が本格的に始まりますが、それも教養の上に専門的な分野を育てていこうという感じです。またアメリカでは、18歳やそこらで高校出たばかりの生徒が、将来の専門をがっちり決めることは無理だし、それは将来の可能性を限定しかねない、と考えているのですね。
ですから、アメリカの大学は、一応Majorがあるものの、専門というものをがっちり固めて入学する必要はないし、色々な分野を学ぶ中で専門となるものを見つけていけばよいと思っているのですね。
このように教養と専門の両方を学ぶため学部は4年間あります。また、学部は教養重視なので、専門を深めたというほど学べていません。そのため専門を深めていくにはまずは大学院に行き、2年間かけて学ぶ必要があります。
また、大学だけでは専門を学んだと言えるほどではなく、キャリアとしてカウントされません。大学院まで出て、キャリアと認められるのです。
日本はアメリカ系に近いと言えます。学部、大学院の年数もそうですし、一般教養科目があるところも同じです。ただ、出願時に学部、専攻を決定しているケースが多く、その点は少し異なりますね。
イギリスでは、大学進学を目指す生徒は10年生(高1)修了時にGCSE(General Certificate of Secondary Education)という試験を受けます。日本語に直すと、中等教育修了試験とでも言いましょうか。つまり、ここで中等教育はひとつ区切りがつきます。
そして、大学を目指す生徒は11年生からSixth Formというプログラムに移ります。これは大学教育への橋渡しとして位置づけられているもので、ある種教養プログラムという意味合いを持っています。このSixth Formを履修し、12年生を終了する際、GCE-Advanced(通称Aレベル)という試験を受け、大学に進んでいくのです。
このようなシステムを取っているので、イギリス系の大学はいきなり専門からスタートします。Sixth Formで教養プログラムはすでに終えているからです。そして、専門だけに集中するので、イギリスの学部は3年で終わります。そして、3年も専門を学んだあとの大学院なので、大学院はさらに1年どっぷりやれば十分なのです。
なお、イギリスは、本当に専門分野だけをやります。最近は専門学校から格上げされた大学もあるので、柔軟な大学もありますが、基本、がちがちに専門をやります。そして、そのために出願時点でがちがちに専門を決めていなくてはなりません。その専門具合も、日本人が考える以上にがちがちです。そんな具合なので、イギリスの学部は、専門性に関してはアメリカの大学院に匹敵すると言われることもあります。
さて、日本人の高校生がいきなり、イギリス系の大学に直接入学できるのか。学校のタイプやレベルによりけりですが、有名大学や伝統的な大学は一般的に直接入学を認めておらず、ファンデーションコース(基礎コース、準備コース)を履修することを条件にしています。
これは単に英語力の問題だけではありません。日本の高校はアメリカと同じ、一般教養を中等教育で幅広く教えていくというプログラムで、イギリス式のシステムを取っていません。いきなり専門からスタートするイギリスにあって、日本の高校生は、IBなどの特別な例を除いて、「高等教育に入る下準備の教養とスキルがまだ身に付いていない」という意味合いでファンデーションコースに入ることが求められるのです。
このように、入学制度、期間、専門性など、なんとなく違うことは知られていますが、もともとの教育システムや考え方が異なるという観点からみると、その違いの意味がよく分かると思います。
アメリカ系、イギリス系、、、どちらが良いかは価値観の問題です。幅広く教養を養った上で専門を深めるほうが良いのか、専門だけやって、突出したものだけを伸ばしていく方が良いのか。
ただし、求められるマインドはかなり違いますよね。出願の時に専門を決める必要があるのかどうかも受験生にとっては大きな違いです。例えば、アメリカとイギリスの併願を考える人がいますが、そもそもこの2つはマインドとして併願しうるものではありません。特に日本の大学システムと異なるイギリス系に進んだ時に「イメージと違う」と言ったことになりかねません。
特に正味4年もある学部生活、どちらのマインドなのか、これは大きな違いです。どちらを取るにせよ、しっかりと特徴を理解して、自分のマインドを確認しながら決めていきましょう。