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リベラルアーツカレッジを知ろう その1

リベラルアーツカレッジ 理念

昨今、海外進学の関心が高まる中で、にわかにリベラルアーツカレッジというものが注目を浴びてきました。このリベラルアーツカレッジなるもの、名前はよく聞くようになりましたが、果たしてそれはどのような大学なのでしょうか。

なんとなくのイメージはあるものの、海外進学に携わる者の間でも、正確な共通理解が得られていないというのが私の印象です。

現在のリベラルアーツカレッジの起源はハーバード大学の創設までさかのぼります。ボストンに入ってきた入植者たちが、昔ながらのリベラルアーツの土台の上に「リーダー育成」を課題として根付いた教養教育がそれです。

リベラルアーツの目指すリーダー像は以下のように集約されます。

・ 多種多様な分野に見識があり、バランスのある教養を持っている。
・ 多角的な視野で諸課題に取り組み、クリエイティブに発想する。
・ 人間性に優れ、人を惹きつける力を持っている

アメリカの大学は、ハーバード大学がそうであるように、もともとリベラルアーツカレッジに端を発しています。時代が進むにつれ、大学院ができ、総合大学へと主流が流れましたが、今あるリベラルアーツは、そのころの教育理念を受け継いで、実践している大学と言えます。

なので、リベラルアーツカレッジ゙は新しいトレンドのように思われていますが、実はもっとも伝統的なトレンドだと言えます。

詳しくは、「リベラルアーツ アメリカ式のルーツ」に書いてありますので、参考にしてください。

具体的な特徴

リベラルアーツカレッジの特徴として一般的に言われるものは、以下の3つでしょうか。この3つぐらいは、どの留学関係者に聞いても共通に出てくる答えだと思います。

@ 大学院ではなく、学部での教養教育を中心にしている。
A 専攻を早いうちに決めず、広い分野を学ぶカリキュラムとなっている。
B 小規模であり、授業も少人数で、教授が近い距離で指導してくれる。

これらの3つの特徴をすべて満たしていることが原則です。日本の大学ではAだけを指して、リベラルアーツと語る場合がありますが、本質的には教養教育ではなく、全人格的リーダーの育成であって、カリキュラムだけの問題だけではないので、それだけでは不十分です。


○ 幅広く学ぶカリキュラム

アメリカの大学は、リベラルアーツカレッジかどうかに関わらず、学部レベルでは教養教育を重視しています。

基本的には一部の理系や芸術系を除いて、最初の2年間は学部にこだわらず広く授業をとることが求められます。ダブルメジャーなどの制度もあるので、柔軟に授業をとることも可能です。

また、入学時に専攻を決定している必要はありません。18歳ぐらいの若者が高等教育に触れる前から、専門と進路を決めるなんて不合理だ、と思っているんですね。

極端に言えば、
「夢を決めて、それに向かって学部を決める」日本型の進学、「夢と特性を探すために、大学で広く学ぶ」アメリカ型の進学と分けることができます。

ただ、幅広い教養教育をどうとらえるかは人によりけりです。私の教え子でカナダのトップリベラルアーツ校に進学した生徒生徒がいますが、彼女はそこでリベラルアーツを満喫したものの、大学3年時に総合大学に編入しました。「リベラルアーツは広すぎて焦点が定まらない、大学3年以降は専門性を求めたい」とその理由を言っていました。

○ 小規模であることも必要なスペック

カリキュラム以外にも小規模、少人数制ということを大切にします。小規模校であることはリベラルアーツカレッジの必須スペックでもあります。

大規模校だといろいろな分野の授業を取るにしても、建物が離れていたりして移動も大変ですが、小規模校であれば、物理的に多様な授業を取ることも可能になります。

余談ですが、『Friends』という私が大好きなアメリカのドラマ(1994-2004)の中で、主人公のロスがニューヨーク大学(NYU)の講師になるエピソードがあります。NYUと言ったら、5万人規模の大規模校かつトップ大学です。その中で、ロスは1つ目と2つ目の授業の建物が遠く離れていて、移動が間に合わず、走りすぎて授業中に失神するいう話があります。

また、少人数が故に、授業形態も一方通行の講義型ではなく、生徒主体のインターラクティブな授業展開が見られます。

ただ、授業料が高い。リベラルアーツカレッジのほとんどが私立というのもあります。小人数ですので、仕方ないですけどね。「教育は買うもの」という考え方です。


(結局、ロスはローラースケートで移動し、授業をすることにしました)

大学全体が学び舎

リベラルアーツカレッジのもう1つの特色として、寮生活を行うということがあります。

最初の1年ないし2年は基本的にほとんどの学生が学内の寮に入ります。先輩やバックグラウンドの異なる人たちと部屋をともにし、一緒に学んだり、教えてもらったり、いろいろ語りあったりして生活します。

なぜリベラルアーツカレッジはこのような教育を実践するのか。

それは大学時代を多感な思春期から社会人への大切な接続期に、出会いと切磋琢磨に恵まれ、教養を身に付けることが、未来を支える人材を育てるうえで欠かせないと考えているからです。

どれだけ人から刺激を受け、学び、切磋琢磨していくか、どれだけ自分の可能性を広げ、知的探求を繰り返していくのか。

そこで求められているのは、効率主義的、実用主義的な教育ではないのです。文学も沢山読まなくてはいけない。趣味も多様で、人間的に成長していかなくてはいけない。芸術もたしなみ、感受性を解き放つことも必要です。語り合うのも学び、お酒を飲みかわすのも学び、そして、それは教授から生徒、先輩から後輩へと受け継がれていく。

そのような
「自分を豊かにしていくための学び」「人と人のつながりの中で生まれる学び」といった古典的な教育システムがリベラルアーツ大学の基礎になっています。

だから少人数、だから寮生活、だから分野の垣根を越えて広く学ぶ、ということになってくるわけです。

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