海外の大学認可制度を知る前に、まず日本の認可制度について知っておきましょう。
日本には700以上の大学がありますが、それらはすべて文科省の認可を受けて設置されたものです。
2012年、民主党政権の時代、就任直後の田中真紀子文部科学大臣が、大学の数が多すぎるとして、翌春開校予定の3大学について「認可を見送る」という発言をして、混乱を引き起こしたということがありました(結果的には発言を覆し、認可されました)。
(当時の記者会見映像:文部科学省HPより、詳細はこちらをクリック。)
この問題の是非はさておき、日本では文科省が大学設置基準に照らし合わせ、認可をしていますので、高等教育機関として認知されている大学は、一応すべてが認可された正規の大学ということになります。
行政が認可、監督することによって、教育水準を維持し、低レベルの大学が乱立されることを防ぐことが目的です。
文科省の設置基準はこちらをクリック。
海外は国によって事情が違います。
行政が設置認可に関与しないアメリカのような国もあれば、国として厳しい大学基準を定めているところもあります。
各国の詳しい認可制度や認定機関については、次ページに載せておきますので、参考にしてください。
アメリカでは、大学の設置基準、手続きは州が管轄しています。厳しい州もあれば、緩い州もあります。
緩い州では、語学学校みたいなところでも大学と称して申請することができます。もっと極端な例を言えば、オンライン授業だけでも大学となりえます(オンライン講座だけで取れるしっかりした学位もありますので、誤解のないように)。
そんないい加減な「大学」が存在しうるのです。そして、それらの大学が出した学位も「学位」なわけです。
いい加減な大学でも、申請が通っていれば全て法律上は「大学」です。かといって、それらが世間から「大学」として扱ってもらえるわけではありません。
もしくは仮に政府の認可がもらえなくても「大学」って自分たちで名乗っちゃえば、「大学」なんです。自称大学ってやつでしょうか。
そこで、重要になってくるのが、民間審査機関からのAccreditation(認可)です。これをもらえている大学は「大学としての質を担保している大学」と社会的に見なされ、そうでない大学は無認可大学(認可外大学)となるのです。
さらに、誰が認定するのかもとても重要です。その認定機関自体が社会的に認められた団体でなくてはありません。
中には、名前だけの認定機関もあれば、無認可大学が自分たちで作った認定機関もあります。認可のねつ造(Accreditation Mill)です)。その場合、一見、認定されているように思えますが、どこに認定されているのかが重要になってくるのです。
この問題に関しては、アメリカCHEA(Council for Higher Education
Accreditation)という機関が対応に当たっています。このCHEAもしくはUSDE(United States Department of Education)に登録してある認定機関であれば、信用された認定機関ということになります。
リストは、こちらをクリックして、見ることができます。
学位を巡るにあたって、Degree Millという問題をしっかり認識しておきましょう。
上で明したとおり、アメリカには政府が認可していない大学があったり、または学位授与にふさわしい授業・研究の実態がなくても、学位を授与するところもあります。
1週間ぐらいの短い講習で学位授与を行うケースもあります。極端な例を言えば、まさに学位を売る、という商売もあります。
このようなことをDegree Mill、Diploma Millと言うんですね。日本語に訳すなら、学位製造工場とでも言いましょうか。
アメリカは資格社会であり、労働者も雇用者も資格を重視します。また国による大学審査制度がないので、このような資格発行ビジネスが溢れています。
Degree Millは最近始まったことではありません。アメリカでは1876年にはその問題が指摘されています。
日本でも問題視されており、文科省のHPにもその考察が公表されています。詳しくはこちらをクリック。
Degree Millによって得た学位は紙切れ同然と扱われても仕方ありません。
自分で実態を知っていて、このような選択肢を取るのは自己責任ですが、知らずにとってしまうなんてこともあり得ます。そして知ってようが、知らなかろうが、それを「学歴」として謳ってしまえば、学歴詐称にもなりえます。
無認可機関によっては、無認可であることを隠して、学生を募集しているところもたくさんありますので、気を付けましょう。
Degree Millにかからないようにするには、自分の目で確かめ、実際に認定機関のHPから検索すること、、、と言いたいところですが、もっと簡単です。
College
Boardに載っていれば大丈夫です。大学検索をすると具体的な認可情報も載っているので、確認しておきましょう。
その1つの作業をするか、怠るかで、もDegree Millは防げます。
Degree Millまで行かなくても、質の低い留学に進んでしまう原因は2つあります。
1つはエージェントやカウンセラーの質です。
留学に対して十分な経験、ノウハウ、パイプを持っていなかったり、質よりもとにかく送り出すことでビジネスを成立させているエージェントもなくはありません。
そして2つ目は留学する本人です。
よく分からないから、言われるがまま、他人任せ、なんてことがあります。例えエージェントを使っていたとしても、やはり自分の進路ですから、自分で責任を持って選ばなくてはいけません。
現地には行けなくても、インターネットでしっかり情報を集めて、比較し、自分の留学プランと相談しながら、主体的に選択することも必要ですよね。