皆さんはこの2つの質問に答えられますか。
Q1: ハーバードは公立なの、私立なの?
Q2: なぜ東海岸に伝統校が多いの?
Q3: なぜアメリカの大学は専門の種類が多いの?
これらは良く受ける質問です。
これもアメリカの歴史が分かれば自ずと答えが分かります。
その象徴となるのが1636年、ハーバード大学の設立です。入植からわずか16年で大学を作ってしまうのだから、衝撃です。その後、1693年にウィリアム・アンド・メアリー大学、1701年にイェール大学と創設が続きます。
ハーバード。。。国を代表する大学ですから東大と同じように国公立と言いたいですよね。東大だってそうですもんね。でも、ハーバード大学は私立です。
実は、これって考えれば、当たり前なんです。
アメリカ独立宣言は1776年ですよね。ハーバードができたのは1636年です。つまりハーバード大学ができたころ、アメリカはまだ国ですらなかったわけで、「国公立」が存在するわけありません。このように、ハーバード大学は建国よりも実に140年も前に設立されたのですが、国もないときから自分たちで教育を進めていったそのビジョンと情熱はなんとも素晴らしいものです。
入植の歴史は東から始まり、西に開拓していったんですよね。ハーバードがボストンにできたころには西部は開拓もへったくれもない時代です。
なんで「アイビーリーグは東海岸に集中しているんだろう?」って思う人もいるかもしれませんが、ただ単純にアメリカの開拓の歴史が東から始まったからです。
西海岸のゴールドラッシュは1840年代後半です。サンフランシスコのNFLアメフトのチームはSan Francisco 49ersですが、これはゴールドラッシュの1849年を表しているんですね。
University of California(カリフォルニア大学)ができたのが1868年、University of Southern California(南カリフォルニア大学)Stanfordができたのが1891年。ハーバードの創設から実に200年以上も後れてのことでした。
今でも、この「伝統」の差は生徒のメンタリティの中にあって、東海岸の大学生は「自分たちは名門生」と誇りを持ち、西海岸の大学生は「東は気取っていて、排他的」と思う傾向が少なからず残っています。
これも西部開拓の歴史と連動しています。
西部開拓が進むにつれて、リーダー育成だけにとどまらず「自分たちの州全体を豊かにする教育」が重要になってきます。
そこでは、農夫や主婦、機械工、そういう人たちも学びます。そこで、名門校のような教養教育や研究に限らず、スキルを高めるような実践的な教育、日本で言うと専門学校や職業訓練的なものも含めて、大学教育が広がっていくのです。
アメリカの大学は専門の種類が多い、とよく言われますが、実践に基づいて学問が広がっていったからなんですね。語弊があるかもしれませんが、職業、キャリアの数だけ専門がある、という感じでしょうか。
アメリカでは、コミュニティカレッジ(2年制大学)を含めれば、希望する人は誰でも高等教育を受けることができます。お金も州内生であればかかりません。庶民のための高等教育を大切にしているのですね。
開拓者たちの国だからこそ、家系や伝統ではなく、教育こそが力であり、一人一人が教育を受けることによって国力を高めていくという考えが根本にはあるのです。
アメリカは大学の数が4000以上あり、ピンからキリまでそろっています。悪く言えば乱立です。しかし、そこにはもともと「すべての人に高等教育を」という尊い理念があるということも覚えておきましょう。