グローバル時代を定義する
グローバル教育を定義する前に、グローバル時代、グローバル人材というものを定義します。単純に考えていきましょう。
グローバル時代は「地球規模」という意味なので、「政治、経済、文化、生活、全てが地球規模で動き、流通する時代」と言えます。もう少し簡単に言えば、「日本にいてもどこにいても外国、異文化とつながるが当たり前」という時代です。
つまり、海外に出る人は「グローバル」の最前線かもしれませんが、日本にいる人だってグローバルのダイナミズムの中で動いていかなくてはいけないわけです。今までは、海外に出る人がグローバルだったのかもしれませんが、これからはグローバルな人が国内か海外か、自分の活躍の場を選ぶ時代と言えます。
グローバル人材を定義する
私はグローバル人材をこう定義します。「どこにいっても（国内でも海外でも）自分のパフォーマンスが下がらない人、むしろワクワクしてグレードアップしてしまう人」ということです。「場所を選ばず自分の力を十二分に発揮できる人」と言えるでしょうか。
だから、一方で語学力も大切です。日本語で日本人相手ならすごい能力を発揮できても、英語になるとさっぱりダメ、というのではいけません。でも、語学力があるだけでは、異文化の中で、もしくは次々と新しい価値観が生まれる中で、自分の力が十分発揮できないですよね。だから、「語学だけではダメ」なのです。例えば、異文化において、曖昧さを受け入れ、柔軟に対応する姿勢も必要です。また、何よりも人間的に優れており、誠実であることはどの国に行っても変わらず重要です。
そのような観点から、具体的な人物像を設定することが「グローバル人材」を語る上では欠かせません。私は、以下のように４つのカテゴリーに分類し、そこから１２個のスキルとマインドを設定しています。
高2・グローバルキャリアでのディスカッション
ちなみに、私はこのようなことをグローバルキャリアの授業で、生徒相手にも考えさせます。高２で行った時には、グループの中で自然とディスカッションリーダーが生まれ、限られた時間の中で中身の濃い議論が行われ、「ベストディスカッション！」とほめちぎったほどです。教員相手でも同じようなことを議論することがありますが、この時ばかりは正直生徒たちの方が中身が濃かったと思うぐらいです。
もっとも多い意見では、「コミュニケーション能力」でした。中には「語学力」と「コミュニケーション力」を違うスキルとして分けるグループも多くあるのですが、「その２つがどう違うの」と聞くと、ぼんやりとしたイメージだけで、はっきりとした答えが出てきません。
このように、分かっているつもりでも、いざ突き詰められると説明が自己矛盾していくんですね。それが重要なんです。自己矛盾して、さらに考えを整理して、気づきが増えて、また自己矛盾にぶつかって、、、そのようなローテーションを繰り返すうちに、議論が深まっていきます。
また「コミュニケーション能力」と一言で言っても、生徒が挙げるのは「発信力」「交渉力」「表現力」など、一方通行のスキルです。そこで、うまく「相手の話を気持ちよく聞く力」「情報を整理する力」など、双方向のコミュニケーションまで話を持っていくと、視野が一気に広がります。
また、面白い意見では「飛行機で寝られること」というものがありました。「なるほどねー、しっかり休めてストレスためないのも必要だもんね」と私は返しました。生徒の発想は面白いですね。
でも、そこで納得しちゃいけません。「でも、飛行機ってことは、やっぱりあなたがイメージしているグローバル人材は『海外に行く人』ってことなの？」と切り返します。生徒はうーん、とつまってしまいます。「国内にいる人もグローバル」と定義しながらも、やはり「グローバル＝海外」という図式にはまりやすくなります。そんなことも、私たちがグローバル人材に対するビジョンをしっかり持っていれば、突っ込んであげられ、クリティカルシンキングを促進することができます。
ちなみに、一番シンプルかつ、一番インパクトあったのが「スマイル」という答えでした。笑顔でミュニケーションを取れる力、異文化交流のストレスを笑いに変える力、誰とでも笑顔を共有できる人間性・・・大切ですよね。スキル、マインドなど細かく設定して、難しく考えがちですが、実は求められていることは意外とシンプルかもしれませんね。今度から、スマイルを項目の中に入れようかな。
