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会議のゴール

会議の成果物

模擬国連の会議ゴールは、ずばり「国連としての決議を出すこと」です。

諸々の課題に対して「どのように取り組んでいくのか、どのように協調していくのか」という国際社会の意思表示をすることにあるのです。

この決議こそ国連会議の成果物であり、そのために交渉、協働をしているのです。

国連総会の決議には法的拘束力がありませんが(安保理の決議には拘束力がある)、国連という場で採択された以上、当然大きな影響力を持ちます。実際にはソフトロー(Soft Law)と呼ばれ、国際規範として機能します。

もちろん拘束力や罰則がないからといって簡単に反故にすることもできず、逸脱する行為は国際社会の非難の的になってしまいます。

したがって、各国の大使は自分たちが従えないような決議や自国にとって不都合な決議を通すわけにはいきません。国民の代表として自国の利益を守る責任があるのです。

その観点から言いかえると、各大使にとっての会議ゴールは「自国の主張が反映された決議案を通す」ということになります。

会議ゴールに向けた2つのステップ

このゴールを達成するためには、@決議案を作成すること、そしてAその決議案を全体で承認してもらう、という2つのステップが必要になります。

この2つのステップをしっかり理解しておくと、大使たちが会議で何をしようとしているのか分かるようになります。

では、具体的に見ていきましょう。

●STEP 1: 決議案(DR)を提出する 

決議案が採択されるには、当然ですが、そもそも決議案を提出しなくてはいけません。

この決議案をDRDraft Resolution)と言います。

ただし、DR1か国だけでは提出することはできない、というのがミソです。会議細則で「DR提出に必要なスポンサー国は○カ国です」といったように条件が明記されています。

スポンサーの数は、理論上DRが4〜5つぐらいでおさまる数になっているのが一般的です。50チームぐらいの参加であれば、9〜12か国程度というのが相場でしょうか。これだと、DR兼任をしない(1つの国が複数のDRのスポンサーになれない)という原則を守れば、多くてもDRは5つまでしか提出されないはずです。


●STEP2: 決議案を採択する

DRを提出したところでホッとしてはいけません(多くの初級者はここで終わってしまうのですが)。

最終ゴールはこのDRが採択されることです。つまり、投票の段階で少なくても過半数の賛成を取り付けなくてはいけないのです。

良いDRが作成できたとしても、そしてその中に自分たちの主張が十分に組み入れられたとしても、採択されなければ廃案です。国際社会に自分たちのメッセージは届かず、なかったのと同じになってしまいます。

STEP1の段階では、DRグループはまだ小さく過半数に届きません。上記のスポンサー条件であれば、まだ50か国中9〜12か国の賛成票しか計算できません。

ですから、DRを提出した後、より大きなグループ形成を目指していき、スポンサー国の数が増えるように努力していきます。

他のDRグループと交渉し、共通点、妥協点を見つけて1つのDRにくっつけてみようと試みます。他のDRとくっつけられれば、それらの国の賛成票も入るので、過半数により近づくわけです。

また、例えDRが1つにくっつけられなくても、投票の際に賛成票を投じてもらえるように、交渉を最後まで続けていきます。

さらに、過半数を超えてもそこで終わりではありません。

決議案の採択だけを考えれば過半数で十分ですが、課題解決のためには国際社会全体で1か国も欠けることなく取り組むことが理想です。最後は全ての国で1つのDRにまとめてコンセンサス(満場一致の採択)を目指していくのです。




グループダイナミズム

この2つのステップこそが模擬国連のグループダイナミズムを生み出す仕組みです。

模擬国連では、各国の大使が会場をところ狭しと動き回り、時に揉め、時に紛糾しながらも交渉を進め、グループを形成して決議案を作っています。

「揉めるぐらいなら、いっそ他国と決別して自分たちだけで決議案を作成すればいいのに」と思うかもしれませんが、そうはいきません。好き勝手に自分たちの主張を組み込み、一匹狼として行動するということでは会議からあぶれてしまうのです。

どんなに良いDRを準備してきたとしても、スポンサー国が集められなければDRを出せません。DRを出せなければ、自分たちの主張もへったくれもありません。他のDRが採択されるだけで、自分たちの反抗の蹄すら残らないのです。

それどころか、自国に都合の悪いDRが採択されてしまったら、その不都合な枠に自国は組み込まれてしまうのです。ですから、妥協をしつつも利害を共にする他国と協力してDR勢力を作り、その声を届かせておかなくてはいけません。

なので、必然的に他国と討議、交渉、協働をせざるを得ないわけです。

立場が違うのに一緒に動かないといけない。そして、自分の利益を通すためには過半数の国の利益も守らないといけないのです。

DR採択は勝ち負けではない

自分たちのDR採択を目指して各大使は会議に参加するわけですが、DR採択は決して勝ち負けではありません。

国や議題、そして会議設定によって有利不利もあります。DRが通らないなら通らないなりに、国益と国際益の中でベストな答えを求め、ハードに交渉を重ね、どのように国際社会にメッセージを残していくかということが大切になります。


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