模擬国連の会議ゴールは、ずばり「国連としての決議を出すこと」です。
諸々の課題に対して「どのように取り組んでいくのか、どのように協調していくのか」という国際社会の意思表示をすることにあるのです。
この決議こそ国連会議の成果物であり、そのために交渉、協働をしているのです。
国連総会の決議には法的拘束力がありませんが(安保理の決議には拘束力がある)、国連という場で採択された以上、当然大きな影響力を持ちます。実際にはソフトロー(Soft Law)と呼ばれ、国際規範として機能します。
もちろん拘束力や罰則がないからといって簡単に反故にすることもできず、逸脱する行為は国際社会の非難の的になってしまいます。
したがって、各国の大使は自分たちが従えないような決議や自国にとって不都合な決議を通すわけにはいきません。国民の代表として自国の利益を守る責任があるのです。
その観点から言いかえると、各大使にとっての会議ゴールは「自国の主張が反映された決議案を通す」ということになります。
このゴールを達成するためには、@決議案を作成すること、そしてAその決議案を全体で承認してもらう、という2つのステップが必要になります。
この2つのステップをしっかり理解しておくと、大使たちが会議で何をしようとしているのか分かるようになります。
では、具体的に見ていきましょう。
この2つのステップこそが模擬国連のグループダイナミズムを生み出す仕組みです。
模擬国連では、各国の大使が会場をところ狭しと動き回り、時に揉め、時に紛糾しながらも交渉を進め、グループを形成して決議案を作っています。
「揉めるぐらいなら、いっそ他国と決別して自分たちだけで決議案を作成すればいいのに」と思うかもしれませんが、そうはいきません。好き勝手に自分たちの主張を組み込み、一匹狼として行動するということでは会議からあぶれてしまうのです。
どんなに良いDRを準備してきたとしても、スポンサー国が集められなければDRを出せません。DRを出せなければ、自分たちの主張もへったくれもありません。他のDRが採択されるだけで、自分たちの反抗の蹄すら残らないのです。
それどころか、自国に都合の悪いDRが採択されてしまったら、その不都合な枠に自国は組み込まれてしまうのです。ですから、妥協をしつつも利害を共にする他国と協力してDR勢力を作り、その声を届かせておかなくてはいけません。
なので、必然的に他国と討議、交渉、協働をせざるを得ないわけです。
立場が違うのに一緒に動かないといけない。そして、自分の利益を通すためには過半数の国の利益も守らないといけないのです。