全ての会議には何かしらのミッションがあります。その会議で何を達成したいのか。私たちはいつまでに何をしないといけないのか。皆さんはそのミッションを常に意識して、政策立案、会議行動ができているでしょうか。
そのミッションの根幹にあるのがSDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)です。2015年9月に採択された開発目標で17のゴールと169のターゲット項目が設定されています。
それ以前のMDGs:Millenium Development Goals(ミレニアム開発目標)は国レベルの取り組みが主眼であり、「量」を求めるゴールだったのに対し、SDGsは「質」を求めるゴールで、国だけでなく、企業や私たち一人一人にまでアプローチを求め、「持続可能な社会」と「誰一人取り残さない世界」を目指したものです。
みなさんも、このSDGsをベースにその会議のミッションを以下の4点から意識し、探求課題として考えていきましょう。
模擬国連の参加大使は2つのミッションを背負っています。
1つは、その国の大使として自国の利益を守るということです。そして、2つ目は、国際社会の一員として、「世界平和、より良い未来を築きあげていく」ということです。
模擬国連に参加するにあたって、私がまず参加者に求めるのはこの2つのミッションをしっかりと意識することです。
例えば「核軍縮」において、核保有国が「核を放棄するべきだ」と言って、国力を落とすわけにはいきません。一方で、核を持っている国も、被爆国も、内戦で苦しんでいる国も、それぞれの立場から「核のない世界」という共通ゴールに対して試行錯誤し、交渉していく責任を負っています。
自国の利益だけで動くのではなく、より良い未来はどうやったら作れるだろう、という究極の問いを参加者のみんなと立場を超えて考えていかなくてはいけないのです。
私は生徒に「大使としての責任と自覚を持って行動できているか」ということを常に問います。
大使は国の代表です。大使の後ろには、何百万、何千万、場合によっては億単位の国民がいるわけです。会議の結果はどうあれ、その国民に恥じない行動ができたか、胸を張って国に帰れるのか、ということです。
なかなか会議だと自国の国民の姿、生活の様子を思い浮かべることができませんが、本当は、その国は自分の生まれ故郷であり、自分の思い出があり、家族や友人がいる場所なんですよね。
大使はその故郷のため、そして国民のために会議に参加している、そんなイメージを持つと大使としての責任を双肩で感じることができるのではないでしょうか。
練習会の講評で、ある学校の顧問が「服装から正せ」と全体に注意をしてくれました。
「皆さんは国の代表として国際会議に参加しているのです、その代表として恥じない服装をしていますか」と。
まさにその通りです。練習会だと、だれてしまったり、床に座っていたり、私語をしていて会議に参加していなかったりと、残念ながら大使としての振る舞いに問題がある生徒が目に付きます。
私が大使の質を判断するのは、内容云々、結果云々の前に、まずは「この大使の国の国民になりたいと思えるか」という基本姿勢です。
そして、生徒に聞くのは「この会議が自国でテレビ中継された時、自分の姿を国民に見せられるのか」ということです。
さらに、模擬国連の事後反省で「圧倒されて発言できなかった」「リサーチ不足だった」「積極的に参加できなかった」「なんとなくDRにサインしてしまった」などといったことを多く聞きます。
初心者であれば、誰もが通る道です。
しかし、その後ろには本来なら自国の国民がいるわけです。自分が責任を持って動かなくては、自分が責任を持って討議や投票に参加しなくては、自分が国民を代弁しなければ、その不利益を被るのは国民であり、皆さんの家族です。
中高校生なので「うまくいかなかった」という反省は当然です。結果として、自国の利益に反する決議が採択されてしまうこともあります。
しかし、問題は結果以前にプロセスの段階で大使にふさわしい行動ができたのか、ということです。
これらの「大使としてのミッション」を自覚すればもっと模擬国連の奥深さが分かり、課題探求を突き詰めることができるでしょう。