本文へスキップ

<<前ページ  次ページ>>

DRの具体例と実効性

DRはどのぐらい具体的なのか

DRにはどれぐらい具体的な内容が組み込まれるのでしょうか。実際のところは、具体的な解決行動よりも抽象的な文言が組み込まれることも多くあります。

まず、国連の決議はある意味メッセージなので、具体的な事項や手続きはあまり入りません。また、先ほどの生徒総会の例のように、細かい点まで突き詰めようとしても、結局は全体の合意を取り付けるのが難しくなっていきます。

国際問題となればなおさらです。そもそも立場も状況も国益もばらばらの国連会議において、過半数が賛同できる案となれば細かい点ばかりで争うことはできません。

1回目のDR提出時ですら、ある程度利害が一致している国同士が集まっているはずが、かなりの妥協を強いられていきます。

さらに修正案では、スポンサー国が多くなるにつれて、ますます抽象度が高くなります。それにつれて自分たちの主張はどんどん薄れていきますが、結託しなければDRを提出できないし、過半数の賛同が得られなければ採択されない。

だから、各論はぶつかるところがあっても歩み寄り、総論で合意を取り付けていくという形になっていくわけです。そして、その対立する各論のところを交渉し、中身や文言を調整、修正していくのです。

2つのストラテジー

その調整の過程で必要になるのが抽象化と一般化です。

この2つの言葉のチョイスと説明は私独自のものですので、言葉にとらわれずにイメージだけつかんでください。この2つのストラテジーは意識、無意識に関わらず、あらゆる交渉やアイデア発想の過程でみられるものであり、模擬国連以外でも有効です。

● 抽象化

抽象化とは、対立点を段階的に曖味にしていき、ぼかしていくことです。溝が埋まらない点は、お互いが合意できるレベルまで内容を薄めていくプロセスです。

各国、目標レベル、手段やアフローチは異なっても、課題解決を一歩進めたいという気持ちは同じです。山に登りたいけど、登る方法や道筋で揉めているのですから、制限や具体論を弱めれば、「それなら登ろう」という国が増えてきます。


生徒総会の例であったように、利害が異なるグループとは具体的な解決策ではぶつかってしまいます。

もちろん最大限具体的にしたいし、実効性のあるものにしたい。でも「朝活動の自粛」という文言がある限り、運動部は絶対に賛成できない。そのジレンマの中で文言を抽象的に変えるわけですが、これを「具体性がないからダメ」と言ってしまうのか、「抽象的でも、全体で小さい1歩踏み出せた」と思うのか、ということです。


初級者にはここが難しいですね。熟練者は曖昧な方向性も駆け引きして、文言のニュアンスや整合性でも議論ができるのですが、初級者は「何かの解決策をはっきり出さなくてはいけない」という思いから具体的かつドラスティックな案を求めてしまう。

どのあたりまで具体的に踏み込み、どこまで抽象性を残すかというさじ加減が分からず、「結局このDRって何だったの?」と思って終わることもしばしばあります。

● 一般化

一般化とは、両方をカバーできる文言で2つの意見を1つにまとめるプロセスです。抽象化と重なる部分も多くありますが、アプローチが異なるのであえて分けておきます。

例えば20個も出てきた主文のアイデアをもっとすっきりまとめたい、半分の10個ぐらいに減らしたいとしたらどうしますか。

当然、1つは優先順位を考えて取捨選択していきます。これは、何が本当に重要なのか議論を通して発見するという行動で、課題の本質に近づくための重要なステップです。

もう1つのストラテジーとして、2つの主文をどうにか1つにできないか、といったような合体案を考えますよね。これが一般化です。


この一般化の作業は、アイデアのグルーピングができることとアイデアの上下の位置関係を把握する力が必要です。私がコンセプトマッピングという言葉で表現する通り、情報や概念の地図を頭の中で作るという思考作業です。

まず、概念や論点に基づいて主文を分類して、結び付きと関係性を考えます。

次に、少し難しい言い方をしますが、上位概念(一般的な概念)と下位概念(具体的な概念)を分けて、上位の概念で2つの主文を包括していきます。簡単に言えば、「その2つは具体的に言うから別々の主文になっちゃうけど、もう少し広い見方をすれば結局同じようなことでしょ」というまとめ方です。

もしくは、2つある主文のうち、1つが上位(ー般的)で、もう1つ下位(具体的)の内容だったら、前者を残して、そこに具体的な内容を組み入れていけばよいですよね。

模擬国連においてもっとも一般的な概念は議題そのものです(実際は、その上に「それによってどう平和実現をしていくのか」という抽象的議題もありますが)。

以下のように、議題と論点、決議案を線で結び、組織図としてイメージします。そして、議題や論点を起点としてどのぐらい掘り下げていかなくてはいけないかで、その主文の階層を判断していきます。



<<前ページ 次ページ>>

バナースペース


HOT TOPICS