前半戦はDRの作成です(2日間会議なら、初日がこれに当たります)。
アンモデ開始を皮切りに、グループを形成し、主張をぶつけながらDR作成に取り掛かります。ある程度の大枠合意ができたら、核となるグループがPCを開き、協力する国がそれを囲み、意見をぶつけ合いながら1つのDRを作成していきます。
DR提出を前にした中盤になるとアンモデもずいぶん様相が変わってきます。DR作成の中心にいるグループは1分1秒たりとも予断を許さないほど、せわしなく動いているのですが、一方、DRの中心にいないグループは取り残された感が出てきます。全日大会ぐらいになると必死にみんなが議論に食いついていくのですが、練習会ぐらいのレベルになると初級者も多いので、その傾向は顕著です。
DR作成の交渉には2つのベクトルがあります。内政と外政という言い方がしっくりくるかもしれません。
・自分たちの主張をDRに盛り込む
・ほかのDRがどのようなものか情報収集する
・自分たちのDRに入るように勧誘する
・より良いDRがあれば、そちらに移るための交渉をする
アンモデでは2人1組で動いても意味がありません。2人がそれぞれの特性に合わせて、立場、役割を決めて動けるようにしましょう。
場合によっては、2人がそれぞれ違うDRグループの中に入り、交渉を進めながら、より自国の利益に合うDRを見極める、という方法もあります。両方にサインするふりして直前に片方を抜けるというような道義的に問題のある方法はあまりよろしくありませんが、DRを見比べて、色々なところと交渉をフラットにしてみて、賢く動くということは外交戦略として当然かつ必要でしょう。
当然、自国の主張が全部通るわけはなく、All
Winは求められません。その中で、トップライン、ボトムラインという2つをしっかり意識することがが重要になります。
特にボトムラインの想定が必須です。簡単に言えば、「これだけは死守しなくては国に帰れない」というラインです。それを意識したうえで、こちらが折れたように見せて、相手にWin感を持たせて、自分たちのWinをいかに多く確保するか、それが交渉です。
さらに、Loseが出そうなときは、そのLoseの抽象度を高めて、具体的なマイナスをなくす交渉努力も大切です。うまく、焦点をぼやかしたり、文言を弱めたり、抽象度を高めることによって、具体性や実効性の乏しいものにさせていきます。
また、模擬国連ではわからないことを突っ込まれるなんてことも多々あります。そんなときは、このフレーズです。「それはそうだけど、でも、、、」、これをうまく使って、自国の話につなげていきましょう。うまく自分の土俵で、自分の論点で話を進めていく交渉術も必要です。
交渉をリードしていくには、何もグループの中心でリーダーシップを発揮するだけが方法ではありません。DR作成をフォローする立場で抜群の存在感をだし、優秀賞を獲得したペアもいます。
これまで見た中で、練習会でしたが、印象に残ったペアが1つあります。彼らは、最初はDRの中心に入らず、どちらかと言えばついていく感じで、外から見ていることの方が多かったのです。しかし、グループ内の交渉が難航しだしたとき、うまく全体の調整に入り、DRのポイントを整理していきました。
しかも、大きな声を出すわけでもなく、ごり押しをするわけでもない。他のペアには分かるように説明してあげながら、意見も聞きつつ、DRをまとめていきました。紳士です。また、人のよさそうな顔立ちで、それも穏やかな雰囲気を作ります。
ごり押しで来られたら反発してしまうけど、ああいう形で取りまとめられたら、素直に頼って、ついていくしかないわけですね。
彼らは「できるペア」です。どこに行っても、どこの国を担当していても、キーとなります。そして、どんなアプローチで進めていっても、必ず最後は交渉をリードしています。ある程度、担当国によって有利不利もあるのでしょうが、やはりできるペアはできるのです。
彼らほどうまくできなくても、自分たちに会ったスタンスで交渉をし、自分たちにできることを探していく、ということが大切なんだと思います。
そして、力のあるペアにうまく乗じて、自分たちのDR交渉を有利に進めていくことも1つの戦略です。