後半戦は、修正案(アメンド)の提出です。
簡単に言うと、DRをより良いものに手直しする作業です。
しかし、ただ単に手直しするのではありません。目標は投票で過半数の同意が得ることです。他のDRグループと共通点を見つけて、2つをくっつけるという試みをします。これをコンバイン(Combine)と言います。DRグループが大きくなれば、そのスポンサー国の賛成が勘定できるからです。
しかし、これはなかなか簡単ではありません。
第1段階のグループ形成は、ある意味利害の一致が分かりやすいので、共通項は見つけやすかったのですが、第2段階は、そもそも利害が一致しないから違うDRを出したわけで、それらのグループ同士がさらにくっつくということは難しいですよね。
もちろん主義主張が違うので簡単にはくっつけません。しかし、過半数を取れなければせっかくのDRは廃案です。そのジレンマの中、延々と交渉が進んでいくのです。
第1段階で十分妥協したはずなのに、さらに譲歩を重ねていくことになります。最初に期待していたDRと比べると、自分たちのWinは一粒、二粒しか入っていないかもしれない。でも、その小さなWinをいかに確保するのか、そして妥協の中でも自分たちのボトムラインは死守するという交渉になっていきます。
Win-Winを目指した積極的なコンバインだけではありません。仮にDR1が最大勢力だとしましょう。その主張だけは絶対通したくないDR2、DR3のグループが、自分たちの主義主張は相反するものなのに、DR1に対抗するためだけに手を組むこともあり得ます。与党にぶつかるための野党連合みたいなものですね。極端に言えば、Loseを出さないためのコンバインです。
アメンド、コンバインという段階になると、中心となる国がますます絞られてきます。それぞれのグループの中心となる国同士が調整をしており、その他の国は蚊帳の外。座って待っているなんて光景も見られます。議論の弱肉強食を目の当たりにします。
アメンドが仕上がったら、公式討議の中でMotionを出し、アメンドを正式に提出します。アメンドの提出は自動受理なので、その時点で採決を取ることなく、アメンドがフロアに提出されたことになります。
さて、もともとの古いDRはどうなったのでしょうか。修正案を出したのだから、古いDRは自動的に破棄されたと思いますよね。「企画書直しておきました」と言ったら、「じゃあ、前の企画書は捨てておくね」と自動的になってくれるといいですよね。
しかし、そうはならないのです。DRは取り下げる手続きを取らなくては、古いDRであっても破棄されません。なので、アメンドを出した時点では、古いDRとそのDRのアメンドといった2つの文章が存在することになります。でも、古いDR1はもういらないので、DR取り下げのMotionを出して、破棄しなくてはいけません。そのMotionが通ったら、初めて、アメンドだけが議論のテーブルに残る、と言うわけです。
この当たり前の作業が単純に行かない場合があります。
DR取り下げにはそのスポンサー国すべてが賛成をしないといけないのです。もし1か国でも反対をしたらこのDRは議場に残ることになります。交渉が難航した結果、修正案よりもとのDRの方が良いと思えば、取り下げに反対する国も出てきます。
このように元のDRを取り下げられなかった場合、その修正案を非友好的修正案(Unfriendly Amendment)と言います。つまり、全スポンサー国が友好的に賛同した修正案ではない、ということですね。
ただし、高校生の大会では基本的に非友好的修正案を認めないルールが多いです。つまり、修正案を出す以上は、全スポンサー国が取り下げに応じないといけない、と言うことです。高校生の模擬国連は平和を目指して、Win-Winになる決議案を作ることを目標としており、このような溝を生じさせる修正案は想定していません。
修正案が提出されて、作業としては一段落しても、まだ交渉は続きます。自分たちのDRが過半数を取れるように、投票を呼び掛け、また利害の反するDRには投票しないように呼びかけていくのです。
選挙の「最後のお願い」みたいなものです。投票直前までギリギリの交渉が続いて行くのです。