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スピーチは会議の華 

スピーチは自国の立場や政策を表明する重要な舞台で、国際会議の華です。国連でも各国の首脳、外相、事務総長に限らず、その他の著名人が総会の舞台で弁をふるいます。

一般演説の時間にまつわるエピソード

一般演説の持ち時間は1か国15分が慣例です。残り1分になると会議場前の緑のランプが黄色に変わり、時間が経つと赤ランプが点滅をするそうですが、この慣例を堂々と無視するケースもあります。

リビアのカダフィ大佐による2009年の総会での演説は95分にも及びます。安保理を「テロ理事会」と痛烈に批判し、国連憲章の冊子を放り投げてしまいます。

もっと強者がいます。キューバのカストロ議長の国連デビューとなる演説はアメリカに対する攻撃姿勢で269分という総会での最長の記録を残しました。

国連史上一番長いスピーチは1957年の安保理におけるインドのメノン国連大使によって作られました。その時間はなんと8時間。これはカシミール地方の領土問題に関する議論に対する議事妨害です。彼は途中過労で倒れて病院搬送されたものの、それでも止めず、議場に戻った後も1時間演説を続けました。

他にも、Newsweekのサイトに「国連総会の仰天スピーチトップ10The Top 10 Craziest Things Ever Said During a U.N. Speech)」と題して、悪い意味で(?)印象的なスピーチが紹介されているので、興味ある人は読んでみてください。




模擬国連におけるスピーチ

スピーチは公式討議の言語で行われます。時間は1分から2分が目安です。キューバであっても、リビアであっても制限時間内におさめないと、議長の木槌がなります。

スピーチは会議の中心ですので、それが終われば議論が終わるということになります。具体的に言うと、スピーカーズリストから国がすべて消えて発言する国がなくなったら決議案の投票に入ります。

仮に議論が熟す前に発言国がなくなった場合、「このままでは投票に移れない」と判断されれば、議長がスピーチを促し、希望する国を募ることもあります。


● 目的

スピーチの本来の目的は、熱いメッセージを伝え、知ってもらう、共感してもらうことです。その中で、自国の政策やDRを訴え、議論をリードし、決議案作成の同志を募るという戦略的な目的も果たせるようにしていけるとベストです。

● 内容

スピーチに組み入れる内容ですが、私は生徒に以下の3つの内容を入れるように指導します。

@ 伝えたいメッセージ
A その課題に関する自国の状況と立場
B 重要視する論点、求めるDR、解決策の方針

初心者はまずはポジションペーパーを英語で要約するということからやってみましょう。その後、「どのように自分たちの思いを伝え、政策の正当性を訴え、共感してもらうか」という視点で修正を加えてみましょう。

また、スピーチを作成する際のポイントの1つとして「具体的な内容をどこまで盛り込むのか」ということがあります。

最大2分という限られた時間で政策を訴えるのが主眼なので、細かいことは入れすぎない方が良いのですが(というより、入れても聞いている側は分からない)、核となる根拠などは数字や具体例を適度に入れて話したほうが、政策の正当性も高まります。




スピーカーズリスト

スピーチは勝手に回ってくるものではありません。自分たちが希望しないとスピーチできません。

議長が会議冒頭にスピーチの希望国を募るのですが、そこでプラカードを挙げてください。すると議長がそれらの国を呼び上げ、スピーカーズリスト(Speaker’s List)に記載していきます。

どの順番でリストに入れていくかは議長の裁量です。簡単に言えば、議長の目についたプラカードの順と言えるでしょう。

もしここで手を挙げそびれても、フロントに「スピーチを希望します。リストに入れてください」というメモを渡せば、リストに入ります。その場合は、すでに多くの国がリストに名を連ねた後ですので順番は最後になり、場合によっては時間の関係で回ってこないということもあります。

スピーチは1度終わり、リストから消えればフロントにメモを回して何度でも希望することができます。議論を続けるにはスピーチを続けないといけませんので、初心者の会議ではスピーチをする国が不足して同じ国が何度も演台に立つということが起きることもあります。




スピーチと英語力

もちろん、英語は上手いにこしたことはありません。田氏も『国連を読む』の中で、「英語力もまた力なり」として、英語の大切さをブータン首相のスピーチを例に次のように語っています。

ティンレイ総理は、「幸福」を人類が希求する開発目標の一つに掲げることを提案した。この提案は、氏の英語力に裏打ちされた卓越した交渉能力によって、翌年七月一九日に決議案となり、総会史上最も多い六八の共同提案国を得て、加盟国の全会一致で採択された、ブータンが国連加盟以来三九年目で提案した決議案は、「幸福決議」として実を結んだのである。

(中略)

ティンレイ総理は地元紙のインタビューに答えて、総会の幸福決議はブータンの外交能力の高さの現れと語っているが、そうした交渉能力の一端に氏の卓越した英語力、演説力があったことは確かであろう。(P63-64

模擬国連の中でも、残念ながら、英語力が不十分で伝わらないというケースも実際に多々あります。英語スピーチの技術や英語そのもののトレーニングも必要であることには変わりありません。

しかし、英語力が全てではありません。上で述べたように英語が流暢でも分からない、伝わらないスピーチや戦略的な内容に終始したつまらないスピーチは腐るほど聞きました。

もう1つ印象に残っているスピーチの例として、決してうまいと言えないけど、頑張って相手に語っている大使を見たことがあります。正直、英語は下手だけど、伝える思いや雰囲気づくりはその会議の中でも優れていたと思います。

それまでは「スピーチなんて誰も聞いていない」典型と言える議場だったのですが、その時は会場の目は彼らに向いていたし、彼らが英語を間違えると会場が笑ったりするのです。ある意味ハチャメチャなスピーチで私も笑いをこらえられませんでしたが、笑う場所がわかるほど相手に聞かせられていた、ということです。

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