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モデレートコーカス

モデレートコーカス 

議長や希望する大使が司会をしながら進行させていく非公式会議をモデレートコーカス(通称モデ)と言います。

大使は座席に座ったまま、ただし非公式会議なので、言語設定が日本語でも良いとされる場合が多くあります。学級委員長が前に出て、議事進行を仕切り、他の生徒が発言をする「学級会」のような感じで、意見や質問を交わしていきます。

実際のDR作成の舞台はアンモデですが、しっかりと議論する、意見を交わす、質疑応答をするという意味では、モデは必要不可欠で、個人的にはここをしっかりと設定することが重要だと思っています。

モデの意義

モデのモーションはアンモデよりも優先順位が低いため、特段モデに対して強い必要性が訴えられなければ投票に付される前にアンモデになってしまうことが多くあります。大使は「早くアンモデに入って交渉したい」と思っているので、議長が裁量でモデを設定しない限り、なかなかモデにならないこともあります。

しかし、時間がないからと言ってアンモデばかりこなして、全体共有を軽視して決議案を作ってもその会議の意義はどこにあるのでしょうか。会議をしっかり成立させるにはやはりモデこそが重要なカギになります。

モデの一番の意義は「全体の場でフェアに透明性をもって議論する」というものです。グループが流動的な初期段階では公の議論の中で論点や主張を整理するために行います。

そして、グループが大きくなりDRやアメンドの提出に関わる終盤では、中心国同士だけの話し合いでなく全体がフェアに情報を共有しながら投票行動に向けて議論する貴重な場になります。極端に言えば、アンモデとモデを毎回繰り返し、議場整理をしながら各大使が次の会議行動をとるという流れがあっても良いぐらいです。

以前に、「モデでは、多くの国が発言をすることに終始して、意見の集約や調整がなされず議論が進まない。どうやったら意見を共有することと議論を進めることを両立できるのでしょうか」という質問をされたことがあります。

これについては、何を目的にモデを取るのかということに関わってきます。

モデという全体会議では、正直細かい意見調整や交渉を進めるということは難しく、そこはアンモデの中で実施していくことになるでしょう。モデの目的は整理と共有、そして次の会議行動の明確化です。そこに焦点をしっかり置いていればモデは十分だと思います。

また、誰が仕切るか、どう仕切るかによってモデの質が変わります。20分しかない場でどのような議論をしていくのかの設定が重要です。

議論は結論や成果物だけではなくそのプロセスも重要です。モデは「納得する当事者を増やす」というプロセスを広く薄くやるという会議ですよね。全員が参加する、共有する、そして少しでも納得する当事者が増えてくれればよいなと思うわけです。

時間に追われる立場になると大変だと思いますが、12つのプロセスを踏むことで、もし正統性が担保できるなら、そこは時間を使ってもいいところでしょう。

モデの形式と目的

モデのモーションを出す際は「目的」を述べなくてはいけません。

その目的はおおざっぱに言うと以下の4つです(モーションを出す際にはもっと具体的な目的を言う必要があります)。モーションを出す側も出される側も、目的と形式を理解してその場にあったモデを設定できるようにしましょう。


これまでの指導経験も含めて、個人的な分析やアドバイスも記します。

● どのように会議を進めていくのか確認、議論したい

アンモデの交渉に入る前に、各国の論点、重点政策、考えている会議行動を共有したいという場合に、1か国30秒ずつを目安にマイクを回していく形で行われます。

正直言うと、冒頭に取られるこのモデはあまり有効だとは思っていません。

結局はそれぞれの思惑がある中で論点が絞りきれず、むしろ混乱を招く可能性があるのと、20分の中で冒頭から発言する国が限られてしまうからです。また、議長や司会の裁量で全体の意見を必ずしも汲み取らないまま議論の流れを作られてしまうこともあります。

強い大使はここで自分の国に有利なように議論展開をしていきたいでしょうし、議論をリードするためにはこのモデを提案して存在感を出したいということはありますが、会議自体のクオリティという点では、やはり限られた時間の中で全ての国が発言を保障されない中で、議論が展開しようにもしづらいのは事実です。

次のモデのほうが時間はかかるけれども会議冒頭に設けるなら有意義だと思います。

● 各国の論点や重点政策を共有したい − 1か国30秒ずつマイクを回していく

「会議全体をどのように進めていくのか、論点は何か」など、まず実際の議論に入る前に共有、確認、議論したいという場合に行われます。

この形式は、参加国の多い会議、論点の曖昧な会議において有効です。

そのような場合、いきなりアンモデに入っても混乱するので、モデで落ち着いて論点を確認しあう時間を取り、アンモデがスムーズにスタートするように設定します。そして、それらを共有することで、各国がその後のアンモデでより明確な理由と戦略を持って交渉に当たれるようにします。

ただし、各国の主張はPPやNPを読めば分かりますので、それを全て説明する必要はありません。この会議で自分たちがどのような会議行動をとりたいのか、それはなぜなのか、という点を明確にしていきましょう。


● アンモデの後に各グループの議論を共有して、議場を整理する(議場整理)

今、議場にはどのような意見とグループがあるのかを整理するために行われます。

このモデは論点整理、情報共有の点から非常に効果的です。特に有効に機能する場面が2つあります。

1つは、会議が流動的でグループ形成が完全に行われる前のタイミング、例えば最初のアンモデの直後といった初期段階です。

それぞれのグループがどのような政策を中心にDRを作ろうとしているのかを共有し、質疑応答をすることによって全体像を把握し、各国が国益を判断しながらグループ、DRを見極めて次の行動に移すことができます。

2つ目はコンバインを模索する段階です。

コンバインはもともと立場の異なるDR1つにしていく作業ですから往々にして難航します。その際、何を争点にコンバイン交渉をしているのか、どこがお互い詰められていない部分なのかを質疑応答も含めて全体で共有し、整理しておくとより有意義な交渉につながります。

● どのように会議を進めていくのか確認、議論したい

DRや修正案の提出に際して、提出国はその案を説明する時間が与えられ、その後、議長裁量にて、各DRに対して1015分程度、質疑応答をする時間が設定されることが一般的です。

DRが会議の最重要の成果物であり、この採択が国際社会の行動規範になると考えれば、このモデはいくら時間があっても足りないほど重要なものです。

そして、この質疑応答を通して多くの矛盾点や不明点も明らかになり、その後のアメンドや投票行動の質を高めることに繋がります。

しかし、現実には中心国同士のやり取りになってしまうことが多くあります。確かにDRを読む時間が短かったりすることもありますが、これからコンバインして自国がスポンサーとして名を連ねるDRになるかもしれません。その意識を持って聞いてみたい部分、確認したい部分、突っ込みたい部分を探し、積極的に発言をしてほしいものです。

なお、質疑は「批判的に突っ込まなければいけない」というハードルを感じなくても大丈夫です。自分たちのリサーチ不足が露呈するのではないか、と思うかもしれませんが、分からないまま会議に臨んでいくほうが望ましくありません。

ある会議で初心者から「○○という部分が分からないので、説明してください」という単純な質疑が出されましたが、それで問題ありません。

ちなみに、国際社会では(特に交渉などの場面では)、コミュニケーションの全責任は説明する側にあります。かといって一言一句説明を求めることは聞く側の問題にもなりますが、主要な情報については補足や説明を求めることは何ら問題ありませんし、むしろ説明側はそこに不備がないように配慮する義務があります。

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