模擬国連では、会議の進行中に大使があちらこちらで手を挙げて、指に挟んだ紙をスタッフに渡して、別の大使に届けてもらいます。
これがノートパッシング、俗に言う「メモ回し」です。
実際の国連会議では水面下交渉はメールや携帯電話、裏での非公式会議などいろいろありますが、模擬国連ではこのメモが交渉の大事なツールとなっています。モデの間、スピーチの合間など、他国と紙で交渉をしているのです。
メモ回しはスピーカーの募集が終わったところから解禁されるのが慣例です。すでにこの段階から国同士の交渉や駆け引きはこのメモで行われているのです。
ただし、メモはあくまでも簡易通信(メッセージのやり取り)に限ります。政策リストやWPの原案など、それを超える内容のものはやり取りすることができません。
メモを回す係(アドミニ)は、大きな大会では運営スタッフが、練習会や小規模の大会では会場校のお手伝い係や見学者、場合によっては教員がこの役を担います。50チームが参加するとなると、ピーク時は10人は係が必要になります。
特に会議の冒頭はグループ形成および最初のアンモデに向けてさばききれないほどの数のメモが飛び交います。
しかし、ここに1つ問題があります。どうしてもスピーチの間にメモ回しが行われてしまい、スピーチが軽視されてしまうのです。
時によって、メモ回しが激しくなりスピーチを抑えてそちらが主になってしまう大使も多くいます。ついついメモ回しに大使もスタッフも必死になってしまいがちですが、会議の中心はあくまでもスピーチです。
国連の一般演説で他国の大使や首脳が登壇している際に、携帯をいじっていたり、メモを回していたりすると無礼になるのは言うまでもありません。同様に、模擬国連でも、スピーチ中は登壇している大使に敬意を払い、しっかりと耳を傾けるためにもメモ回しは自粛します(はっきり禁止されている会議もあります)。
メモ回しのスタッフ側も大量のメモを受け取り、宅配業者がそうであるように時間内に必死に届けなければと思ってしまいますが、スピーチの時間は動きを止めます。
仮に裁ききれず、最初のアンモデまでに配達が終わらなくてもそれはそれでいいのです。メモはあくまで水面下交渉の紙にしかすぎません。会議の華であるスピーチを邪魔してまで配布するものではありませんし、大使もスピーチを無視してまで受け取るものではありません。
裁ききれなかったメモは、その後、例え大使がその場を離れていたとしても、座席に置いて来れば問題ありません(時々、アンモデ中にわざわざその大使を探して渡しに行く律儀なスタッフを見ますが、その必要はありません)。
大使の皆さんも、もしメモが遅れて届いても、「メールを確認するのが遅かった、入れ違いだった」ぐらいの気持ちで受け止めるようにしましょう。