1年目、私がマンションのリビングルームに住んでいたということは前にお話ししましたが、そこで起こったルームメイトとの出来事を書いていきます。
(復習ですが私の住んでいたのはこのマンションのリビングです)
1人はアパートのオーナーだった台湾人のフランクです(ニックネームです)。親日を称しており、日本のドラマが好き、父親が日本とも取引のある会社を経営しているということで、日本語も少しだけ話せました。『ひとつ屋根の下』の酒井のり子がかわいい、と言っていました。
彼はサンフランシスコ市内のゴールデンゲイト大学というところの大学院でビジネスを専攻する学生でした。結構身長も高く、180は優に超え、童顔ともおじさんとも言える顔に口ひげを蓄えていました。気さくで第一印象はとても良い感じのルームメイトでしたが、後ほど話しますが、まあ、彼はかなりクセのある人間でした。
もう1人は私が入居して1か月ぐらいして入ってきました。マークというマレーシア人ですが、彼は私と同じサンフランシスコ州立大学の学部生でジャーナリズムを専攻していました。
幼少期から海外にも住んでいたということで、留学生なんだけど英語はネイティブみたいな感じで、顔も南アジアっぽくなく、どちらかというと日本人に近い感じです。
カジュアルだけど物腰もやわらかい感じで、見た目もかわいいとかっこいい、どちらとも取れる感じでした。ちょっと中性的な感じがあって、汚いとか雑といった男性のステレオタイプとは無縁。もしかしたらゲイだったのかも、と今でも少し思っています。
とにかく、彼はベストルームメイトでした。当たりです。彼とは離れすぎず、近すぎず、一度も揉めることなく一番心地よい距離感が保てました。
どちらかが夜中にテラスでタバコを吸っていると、「Can I join you?」と言って加わり、二人で10分話し、終わったら「じゃあね」と言ってお互い部屋に戻っていくようなことが一番の記憶に残っています。
ルームメイトだけど、その後も仲良くしたいなと思ったぐらいです。結局メール以外の連絡先は交換しないでお互い別れたので、その後は1回か2回やり取りしただけですが。
(二人の似顔絵を書くと、一応こんな感じ。)
さて、フランクですが、彼は本当に困ったちゃんでした。ひとことで言うと「いい加減」。そして自由人みたいな生活でした。まあ、それこそ「小っちゃいことは気にしない、ワカチコワカチコ」っていうフレーズは彼と昔の私の兄のためにあるような言葉でした。
まず、彼はいつ大学に行っていたんだろう?と思うぐらい、家にいます。多分、大学はほとんど行っていなかったと思います。
私やマークが授業に毎日出て家を空けるのに引き換え、彼はほとんど家にいるのですね。私も大学院生で授業の数は少なかったので、結構家にこもっていたほうですが、彼はとにかく勉強していたり、大学に行っている素振りがほとんどないのです。たまに「大学行ってくる」みたいな時があるのですが、それも本当にまれ。あとは、週末にバスケに遊びに行ったりとか、そんな感じでした。
私たち3人はキッチンは共同でしたが、自炊していたのはほぼ私だけでした。マークは友達と外食して来たり、買って帰って来たりでほとんど家で料理することはありませんでした。フランクが冷凍水餃子を茹でて食べるなんてことはよくしていましたが、またこれが雑。
彼は料理で使った後の鍋はまず洗わない。作り終わった後に蛇口の水で鍋を当てて、そのまま箸で底面をシャカシャカするだけ。彼の使い終わった鍋にはいつも水餃子の皮がくっついていたり、油がベトリと残っていたり。
炊飯器も彼が持っているものを私も共有していたのですが、水受けをずっと洗っていないので、そこを開けたときに緑のカビだらけ。私も当分はそれに気づかずにご飯炊いて食べていましたが、カビでご飯炊いていたようなもんかもしれません。
私の住んでいたリビングとキッチンはカーテンを隔ててはいるものの空間はつながっています。ルームメイトがキッチンに行くたびに私の部屋の隣を通るわけですが、フランクは完全な夜人間で、夜中、しかも深夜の2時、3時にキッチンに来ることもよくあります。
私の部屋に入ってくるドアは鉄製だったのですが、それがガチャっと開いて、廊下をすたすた歩いていく。そして、冷蔵庫をバサッと開けて、蛇口から水を勢いよくシャーっと出す。。。そんなことがしょっちゅうありました。
マークが夜中に来ることはほとんどありませんでしたが、フランクは人が寝ていようが気にせず普通にドアを開けていきます。そーっとドアを開けるっていう感覚なんかなかったようです。
私はこれでも結構神経質なので、少しした音で起きてしまうんですね。皆さん、分からないでしょ。深夜に聞く水の音ってすごくうるさいんです。リビングに1年間住んだ私はそれを身を持って実感しました。
これについては、キッチンがそこにある以上、仕方ないこともあるのですが、なるべく静かにお願いね、と言いにいったことが1回ありました。
他にも私とマークを悩ませた彼の行動があります。それは、フランクのテツマン、徹夜マージャンです。
台湾人の友人を呼んで、夜通し朝までマージャンをやっていることがあるんです。そして、それが盛り上がり、大きな声がガンガン聞こえるのです。しかも、月曜日の夜から。週に何日も開催されることがありました。
この件は、フランクの部屋に接しているマークの方が深刻でした。温厚な彼もさすがに私のところに相談しに来て、その後フランクに「平日はやめてほしい」と言いに行っていました。
フランクはその場では「分かった」というんですが、正直あんまり変わりません。マージャンを自粛するという考えではなく、「じゃあ静かにやろう」という考えの持ち主なので、多少静かにしてみたところで、話し声はガンガン聞こえるし、盛り上がる時は盛り上がっちゃうんですね。
フランクには他にも困ったことがありました。私の住んでいるリビングのカーテン越しに筋トレのベンチプレスが置いてあるんですね。私の布団から2メートルぐらいのところです。留学生でこんなものを持って、しかもマスターベッドルームに住んでいて、マージャンしながら遊んでいるので、どうしようもないボンボンなんだと思いますが、このベンチプレスが困った種の1つでした。
彼がそれをやるわけですね。そう、深夜に。考えられますか?私が寝ている2メートル先でまさかの筋トレが始まるのです。
最初、11時ぐらいにやり始めたときはびっくりしました。確かに私は電気付けていたけど、もうお休みモードだったんですね。そのまったりとした中、急にまたがチャッと鉄のドアが開き、急に「ふん!うーっ!うーっ!がちゃーん!!」と筋トレが始まるのです。
一度、寝ているときに筋トレが始まり、時計を見たら深夜1時か2時だったことがあります。勘弁してよ〜。さすがにこれは黙っていられませんでした。彼に「もう寝てるんだけど」と文句を言いました。
翌日、改めて彼の部屋に行き、「電気がついているときがあっても休んでいるときもあるから、11時を過ぎたら筋トレはやめてほしい」と言いに行きました。
さて、その後はどうなったか。数日はおとなしくなりました。でも、筋肉がムズムズしちゃったんでしょうね。1週間もたたないうちに、深夜にまたガチャッとドアが開きます。
でも、今度は、やはり静かにやろうと思ったのでしょう。静か−にベンチプレスを持ち上げ、声も出さないように筋トレをします。でも、くいしばっている口から「むふぅ〜ん、むふぅ〜ん」ってセクシーな声が漏れてきます。
ちなみに、フランクには台湾に彼女がいました。航空会社の国際線CAをやっているようで、1か月に1度ぐらいサンフランシスコに仕事で来ていました。そしてサンフランシスコで1、2泊してまた飛行機に乗って帰って行くのですが、そのたびにフランクのところに泊りに来ていたのです。
一度挨拶したことがありますが、まあCAらしい感じのきれいな人だったイメージだけは覚えています。彼女が泊りに来る、、、そんなことはどうでもいいんです。そこに神経質になるほど私も子供ではなく、やることやってくれててもいいんですが、いんですが、その期間、フランクの風貌が独特だったんです。
飲み物取りに来たりして、キッチンにきたりしますよね。そこですれ違ったり、もしくは用事があって話しかけたりすることもあったのですが、彼は上は普通の服ですが、下はタオルを巻いているのです。しかも、バスタオルではなくて小学生が使うプールタオル。
わかりますね。まあ彼女が来てお盛んだったんでしょうが、「いまやってましたー」って一応隠さないの?メッセージをそんなあからさまに出す?これは異文化なのか、フランクだからなのか??、、、それからはその彼女を見るたびにどうしてもプールタオルのイメージが離れませんでした。
いずれにしても他の人と住むというのは大変な事だってことを嫌でもわからされた1年目でした。最後にフランクに迷惑をかけられるることがまた起きるんですけどね。
サンフランシスコに来る前ですが、私のアメリカ人の友人が自分のルームメイトの話をしていたときに「ルームメイトは友達でしょ」と私が聞いたら、「いや、ルームメイトは友達じゃない」という答えが返ってきました。
留学前の私は、一緒に住んでいたら仲良くなるんじゃないの、って思っていましたが、自分がルームシェアをすることになり、その意味がよく分かりました。
ルームメイトと仲良くなろうとか、近づこうというのは基本やめておいた方がいい。
私も最初はフランクと仲良くやれれば良いなと思いましたが、そもそもその考え方から間違っていたと思いますね。すれ違う時に「Hi!」って言う程度で、後は「話す必要なし」と割り切っていればどうせ関心のない相手で、こちらの迷惑にならなければどうでも良いわけです。
言ってしまえばルームメイトは家賃を割り勘するための戦略的同居人であり、お互いの生活に支障がないのが最良の条件で、一緒に住んでいるからと言って合うわけでもなければ、仲良くある必要もないのです。
うまくいけばいいけど、うまくいかせようと思うと面倒くさいし、家で気を使うのは疲れるだけなので、ルームメイトとの間に積極的な関係性は求めないことです。無理に突き放す必要もないし、自然体で生活している中で結果的に仲良くなるのはいいけど、そこには私とマークのようにお互いの距離感がちゃんととれていて、近づきすぎないということが原則かと。
私とマークも一緒に食事したのは1回だけです。私が友人を招待していて、用意していた料理があるんですが、相手が急に体調が崩れてしまったのでマークを誘って私の部屋で食べたことだけです。ちょっとだけお酒も飲んで、終わったら「じゃあ」って部屋に戻っていく。
マークのことはルームメイトとして本当に好きだったので、タバコを一緒に吸って話したり、1回食事したりしただけで十分良い思い出です。彼との写真は1枚だけ残っています。この話を書きながら、久しぶりに見ましたが、懐かしいものです。
もしかしたら、一緒に遊ぶとか映画を見るとか、飲みに行くとか、アメリカドラマみたいなルームメイトの関係もありえたのかもしれないけど、あまり入り込まないからうまくいった関係だったんだと思います。