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馬の合わない教授 Dr. Wax

水と油のWaxとMax

Dr. Scovelとは対照的に、合わない教授もいました。

それがDr. Wax(仮名)。

言語学の教授で、授業は確かに面白いんだけど、自信と気の強さが彼女の雰囲気全体から漂ってくる感じ。。。

ん???誰かさんと一緒?。。。そう、おそらく私とそっくりなんでしょうね。そしてそこが合わなかった原因かもしれません。だってMAXが二人もいたら、そりゃキツイわー、ってみなさんも思うでしょ。

性格的に似ていて水と油です。だからWaxMax。。。名前もぶつかってますね。

Wax教授の授業は2つ取りました。1つ目が言語意味論(Semantics)という授業です。

正直、なんとなく最初から「この人とは合わないなあ」と思っていました。その思いがあることをきっかけに膨れ上がりました。

プレゼンで低い評価を付けられたのです。私は大学時代から言語学を学んでいたという自負もあって(今考えると中身のない自負ですが)納得いきません。

私も引き下がらず、反論します。「いや、このような解釈だって正しいはずだ」と食って掛かったんですね。「これはあなたの解釈じゃない、セオリーだ」と一蹴されたのです。そんな感じでプチバトルが授業中に展開されました。後にクラスメイトから「Dr.WaxMaxは馬が合わないよね、議論聞いていてもこちらがひやひやするわ」と言われたぐらい。

後日、私は彼女に長ーい反論メールを送りました。その理論のもともとの論文まで読み、その提唱者の言葉を引用して、「私の解釈は十分に根拠がある」と再度訴えたのです(今考えると果てしなくめんどくせー生徒ですね)。

私は自分の解釈にそれなりの自信があり、おそらく相当ロジカルかつ具体的に説明できていたと思います(少なくてもうまくこじ付けられていた)。

そして彼女からの返信。

「時間がないから、何か用があるなら直接オフィスに来なさい」。。。たったその1行。

私の長いメールに対する返信がこれか。多少憤りもありました。。。でも、「そうだよな、こんな長いメール、相手しないよな」って冷静に思いましたね。

私は彼女と議論がしたかったわけでもないし、好きな教授じゃなかったので、わざわざ彼女のオフィスを訪れるわけでもありませんでした。自分が反論をできただけで満足できていたのかもしれません。いや、納得いかない成績をつけた馬の合わない教授に引き下がらないところを見せたかっただけかもしれません。

迷った末に当たって砕けろ 新理論

学期の最後にもう1つ別のプレゼンを行いました。

他の生徒が身の回りの無難な意味論を説明する中で、私は自分で新理論を考えていました。その内容はクラスのプレゼンの枠をはるかに超えたものでした。自分にとっては大発見であっても、他の人には暴論受け取られるかもしれないわけです。

簡単に言うと「言葉」と「意味」というように私たちは2つに分けていますが、「言語と意味の間にさらにもう1つ見えない要素があり、3段構造でできている」というものです。すでに文法は3段構造に分かれているという説が一般的にあったので、もし意味の面でも同じモデルを提唱できたら、言語はよりシンプルに説明できることになります。

まあ、これだけでもぶっ飛んでいるのがお分かりかと思います。

正直相当迷いました。すでに納得のいかない評価を1つもらっていただけに、こんなチャレンジはハイリスクです。

自己満足の訳の分からないプレゼンと言われかねないし、めちゃくちゃな成績がついたらどうしよう。無難にまとめたほうが良いのか、自分の信念を貫くのか。

でも、最後は「どうせ1つ悪い成績取ったし、好きなことやって当たって砕けてやれ!」と思ったのです。チャレンジないところに意味がない!

プレゼンでは、私の仮説を化学の分子モデルみたいに書いて説明していきます。みんな呆然です。そして15分のプレゼンが終わりました。

自分では納得のいくプレゼンでした。あとはどう評価されるかは自分の問題ではないし、どんな評価でも自分の発表には価値があると思って自信を持っていました。

そうは言ってもなんだかんだ気になる。成績という面でも気になるけど、自分が大発見と思った仮説が言語学的にどう評価されるのか。

Dr. Waxは半分驚いたような顔で、半分納得したような顔でうなずき、「あなたは意味が3段階構想という仮説を見事に説明したわね」と。言語学者である彼女が、私の突拍子もない新理論の可能性を少なからず認めてくれました。

授業の後にもクラスメイトから「この理論はあなたが自分で思いついたの?」とクラスメイトからもひっきりなしに驚かれ、おかげさまで一瞬「神童」みたいな扱いを受けました。

ちなみに、そのクラスは最初のプレゼンが響いて、成績はAマイナスでした。大学院時代全ての授業がAでそろっていたのに、その授業だけがAマイナス。いまだに悔しいけど、このHPに書けるぐらいのエピソードも残ったし、またそれがなかったら2本目のチャレンジは思い切ってできなかったかもしれませんね。

最後まで馬が合わなかったけど

Dr. Waxの授業はもう1つ取りました。私の得意とする言語心理学(Psycolinguistics)という分野の授業です。毎回私のプレゼンは印象深かったらしく、かなりお褒めをいただいていました。なんだかんだ、私に一目置いてくれていたようです。

ある時、lucidというフィードバックをもらいました。意味が分からず、後で辞書で調べたら「明快、頭脳明晰」という意味です。多分、彼女からの最大の賛辞です。

「なーんだ、最初は馬が合わなかったけど、最後は美談なのね」と思われるかもしれませんが、そうではありません。最後まで馬が合わず、最後まで好きじゃありませんでした。多分向こうも「合わない学生」とずっと思っていたと思います。

でも、こうやって振り返ってみると、、、馬が合わなかった分、エピソードも特別感を帯びてしまっている気がしますね。

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