日本に一時帰国するにあたって1つ考えないといけない問題が出てきました。
借りているこの部屋をどうするのか、ということです。
帰国するのは6月から8月上旬までの2か月ちょっと。月425ドルのリビングルームに住んでいましたが、当然家賃を払ったまま部屋を空にして2か月以上日本に帰るので、貧乏根性の染みついた私にはもったいない。
中には2年目は別の家に引っ越しする学生もいましたので、私もどうしようかと頭の片隅で思っていました。
合わないルームメイトがいるのは事実だとしても生活的には不都合ないし、大学から徒歩で10分だし、自由だし、安いし、なんだかんだ2年目もここで良いかと思っていました。
リビングルーム生活を脱却したい気もしましたが、サンフランシスコは家賃が高いから1人部屋は難しいだろうし、引っ越したところで結局は月425ドルのリビングルームを探し求めることになる気がしていましたし。
ちなみに、ここらあたりで「私のお部屋事情」と「ルームメイト 当たりと外れ」を復習していただけるとこのページの話よく分かります
ところが、事態が急変します。夏休みまであと1か月、4月末ぐらいだったかと思います。
フランクという相性が合わないほうのルームメイトが私の部屋に来て、「実は国に帰ることになった」ということを打ち明けられたのです。
ここのところ全く大学に行かずにマージャンとバスケットに明け暮れていたようだし、4月下旬から慌ただしく動いていたのでそんな予感もうっすらしていました。
しかし、彼の帰国は私たちにも影響なしでは済まされません。
彼はマンションの借主で、私やもう一人のルームメイトであるマイクは彼からサブレント(又貸し)してもらっている立場なので、彼が帰国してしまったら私たちも家を出ていかなくてはいけません。
さすがにあと1か月学校を残すタイミングで引っ越すのは困るのですが、そこはフランクも分かっているので「マンションの契約はあと1か月あるからここに住んでいていい」と言うのです。
彼の友人にマンションの管理や契約のことなどは任せ、セキュリティディポジット(最初の預り金、敷金みたいなもの)も彼から返金してくれるということでした。その友人のことは入居当時から知っていて話したこともあるし、フランクよりは何倍も信頼できる人柄なので、とりあえずは安心しました。
授業がある最中に外に出され、家なき子になる心配はなくなりました。しかし、同時に夏前にはこの場所を出なくてはいけないということが決定しました。
フランクはその後、風のように去っていきました。
私に帰国のことを告げた後も荷造りなどをしている様子はありません。
しかし、その数日後、彼の友人が何回かドタバタと入ってきたかと思えば、カーテン越しに彼の声が。「コウヘイ、これから帰国するから。ばーい」。カーテンの向こう側にフランクの影が見える状況です。
彼はそのままに去ろうとするので、「さすがに御簾越しに話す平安時代の貴族じゃないんだし」と思って、私がカーテンの外に出て彼と最後の挨拶をします。
「ありがとう、気を付けてね」と挨拶をし、握手をしてお別れをします。彼からも一言、二言あり、「あとは僕の友人に任せてあるから大丈夫」、そう言って彼は、そのままスーツケースを持って家を出ていきました。
本当に風と共に去っていきました。
以前、フランクことを「いい加減」「小さいことは気にしない」と表現しましたが、ここでフランクの本領発揮を目の当たりにします。
驚くことに彼は本当に何も片付けずに去っていきました。
鍋や日用品もそのまま。しかも、料理したものも洗わないでそのままです。数日後に私が鍋に気づいてふたを開けたら白いスープみたいなものにカビが生えています。
彼の部屋に入ってみたら、でかいL字型の机もテレビも棚もそのまま。
私の住むリビングルームに置かれ、夜な夜なそのトレーニング音に悩まされたベンチプレスもそのままです。
生活感がありふれたまま住人が失踪するドラマを思い出しました。彼の帰国を知らなかったらただの神隠しです。
彼の友人がこれらを全部片づけるのか、、、ベンチプレスを見て同情をせずにいられません。
(置いて行かれたこんなベンチプレス)
すでに一時帰国便のチケットはとっていました。
それまでに荷物をレンタルストレージ(仮倉庫)に移し、帰国と同時にこの場所を引き払い、そしてアメリカに戻ってきたら再度家探しから始めなくてはなりません。
家から歩いて10分ぐらいのところにストレージがあり、値段もお手頃だったのでそこに決めました。2か月ちょっと、色々込みで100ドル以内でした。
テレビ(当時はブラウン管)や机、マット、書籍など大きなものを中心にそのストレージに入れることにします。車を持っている友人にお願いをし、荷物を一緒に運んでもらうことも取り付けました。
(こんな感じのレンタルストレージ)
さらに、同時期に日本に帰国する友人がいたのである程度の衣類や小物はその部屋で預かってくれることになり、再渡米後も家が見つかるまでその友人の家に滞在させてもらうことにしていました。
そして、ストレージの引っ越しを前にして、日本人の大学院仲間が4人ぐらいで片付けと掃除を手伝いに来てくれました。いつも一緒に集まり、バーベキューをしたりした女子会の面々です。
最低限きれいにして、敷金をもらって出ればよいと思ったのですが、さすが女子、「汚い!」と文句を言いつつキッチンにこぶりついた黄色と茶色の油汚れなども完全に落としてピカピカにしてくれました(もちろんただではありません。夜ご飯ぐらいおごらせていただいたような気がします。)
ちなみに、片付けて一番苦労したのはリビングを仕切っていたカーテンをはがすことです。
強力粘着のフックでぶら下げていたのですが、このフックがはがれない。カーテンははがれてもフックだけは残った状態になってしまう。これだと敷金が返ってこないのでは!
やばい、とりあえずカーテンごと思いっきり引っ張ったら、重さに負けてフックの先端が折れてしまいました。困った。
なんとか試行錯誤して、フックの根元の位置にカーテンのひもをひっかけて横方向に圧力を掛けます。バキバキバキッ!!と音を立ててフックが外れていきます。天井の壁まで一緒に引きつれて。
でもこれしかやりようがないので、結局最後にはフックの足型をした動物が天井を歩いたかのような跡が残ってしまいました。
(こんな感じで天井がはがれていきます)
もう一人のルームメイトのマイクは私よりも前に部屋を引き払っていました。
彼とは同じ大学なのでまた会えるかなと思い、連絡先を交換してあっさりとお別れしました(ルームメイト同士でもそれまでお互いのメールアドレスも知らなかったのです)。でも結局マイクともそれを最後に、1,2回メールしたぐらいでキャンパスでも一度も会うことはありませんでした。
最後大きな2LDKで残ったのは私一人です。
すっからかんという感じではありません。ちゃんとフランクの残したものが存在感強めに居座っています。
帰国前日は荷物を預ける友人宅に泊まらせてもらうことにし、1日前にマンションを出ました。
例の同情すべきフランクの友人がマンションの引き払いと鍵の受け渡しに立ち会ってくれます。なるべく天井の動物の足跡から目をそらせなければと思ったのも杞憂です。
さすが、フランクのベンチプレスまで引き取ってくれる彼にフックの足跡なんてどうでもよいことなのです。部屋に入ると何も確認せずに1秒で敷金のチェック(小切手)をくれました。
こうやって急なことではありましたが、色々な友人の力を借りて一時帰国する準備を整えました。
再渡米後、部屋探しから始めることは面倒くさかったですが、1年目もそうやって始めたことだし、とりあえずはその心配を先延ばしにして一時帰国を迎えることになります。
新しい場所で心機一転2年目の生活を始めよう、、、そう思った矢先、2年目はまさに波乱万丈の幕開けが待っているのでした。
乞うご期待。